からくりサーカスコミックス24巻発売記念緊急おまけ企画!
「勝記憶一人旅」

 

はじめに・この企画の楽しみ方:
1.このページをプリントアウトしよう!
2.縮小コピーして単行本サイズにしよう!
3.本屋さんかコンビニに行って、「からくりサーカス」24巻を買おう!
4.コミックスの巻末に貼りつけてできあがり!

 

(黒賀村・屋敷。
(広大な板の間に、気を失ったように倒れている才賀勝。
(それを囲むように村の男達、そして、
(上座の水槽に浮かび、勝を見下ろす才賀正二)

 

勝「これが……おじいちゃんの……記憶……?」

正二「貞義よ……私の記憶をどこまで見た……?」

 

 プカプカ、ドンドン。

 やァやァ観客のみなさま、いながぁ〜い昔話におつきあいくださりましてお疲れさまです。

 勝はただいま、黒賀村村長屋敷で、目の前に浮かぶ祖父・正二の若い時の記憶を見ております。思えば、一人で旅立ったのがつい昨日のことであります。めいた男・ギイの言葉に導かれるままに軽井沢別荘跡を訪れた勝は、そこで大変なことを知ったのです。

おまえは私   才賀貞義なのだ。

 そして連れて行かれた黒賀村の屋敷で勝を待っていたのは、3年前に死んだはずの才賀正二だったのです。正二は勝に無理矢理自分の血を飲ませました。人の記憶を溶かして保存する「生命の水」を。

 勝の、祖父・正二の記憶への旅は、そこから始まったのです。

 では、今しばらくその旅路におつきあいくださいませ。

プカプカドンドン。

 

 

勝「これが……おじいちゃんの……記憶……?」

 

(燃える遊郭。
(正二郎、抜刀した浪人と素手で対峙している。
(そのそばに震える遊女・小菊と禿の少女)

 

浪人「どげんした医者ァ! 石舟斎のごて無刀取
   浪人「どげんした医者ァ! 石舟斎のごて借金取りに挑んでみるか?」

 

(息をのむ正二郎)

 

浪人「なら参るぞ!!

 

(浪人は攻撃した!
(正二郎は借金取りで挑んだ!)

 

正二郎「おうおうおう、又兵衛(仮名)
 一年前に貸した十両バ、
いつンなったら返しチくれっとね!」

浪人「ひええええっ!(平伏)すいません先生ぇ〜〜、
(ごほごほ)働こうにもこの体です、この五ヶ月ずっと寝たきりで(ごほごほ)、
もうちょっと……もうちょっとだけ待ってくだせぇ〜〜」

正二郎「ふざけんじゃなかよ又兵衛(仮名)!
……しょうがなか。ほんつごとなら、
こン娘バ借金のカタにもらってくとね。
(小菊に)ほら、こっち来い

小菊「いやあああっ、
おとっつぁん〜〜!」

浪人「こぎくぅぅぅ〜〜。許してくださぇ先生! 必ず返しますから娘だけは〜〜!」

正二郎「やなこったい。
ほぅ、こうして見っとなかなかの上玉のごたる。
遊郭バ売り飛ばしたら貸した分バ取り返せったい……そうだ、
そン前に味バ見るのも悪かなかとね……うへへへへへ♪」

小菊「あ〜〜れ〜〜!」

浪人「こ、この人でなしめ〜〜!」

禿「あの……おいらん、もう売り飛ばされてますけど……」

 

勝「(うわごとに)……おじいちゃん、
おじいちゃんは借金取りだったの……!?」

村の衆「(勝を窺い)……ずいぶん苦しんでるようだな」

正二「ふっ、おのれの悪行に気づいたようだな」

 

 

(炎の中。
(アンジェリーナ、あるるかんで正二郎を先導する)

 

正二郎「か……復讐に生きてたら、
そう考えるのも普通じゃろうな。
「ばってん、白銀先生はこうもおっしゃっとった……

『持ち物が壊されたと言
      「『持ち物が壊されたと言うばかりか、
                 餅ものぅ、食べられてしまったんじゃよ』
とな。

「側でこんな駄洒落ばっかり聞かされとると、
ほれ、うまく笑えんごとなるぞ

アンジェリーナ「……(ぷい、とそっぽを向く。ちょっとウケたようだ)」

 

勝「(うわごとに)さむいよ……寒いよぉ、おじいちゃん……

村の衆「長……、寒いと言っておりますが」

長「毛布でもかけてやれ」

 

 

(炎の中。
(劫火の前に立つアンジェリーナと正二郎)

 

アンジェリーナ「三十数えたら走り抜けてください。内側から道を作ります」

正二郎「三十……ったって、そぎゃん炎の中におっ
   正二郎「三十……ったって、
         そぎゃん歳まで留年つづけて女子高生の中におったら退学ばい!
             やめんか!

アンジェリーナN「ふ……でも正二郎さん、私はやめないの。
そしてあなたは、
セーラー服包んだ私が
なんちゃって女子高生やAV女子校生に見える。
私が怖くなる。
私とあなたの関係はそれで終わり……でも、実はけっこう似合うのよ。えへ♪

 

勝「あんじぇりーなさん……こわいよ、こわいよぉ……」

村の衆「正二様……アンジェリーナ様を、怖いと言っておるようですが……」

正二「わっ、わたしの愛しのアンジェリーナを怖いだとぉ!?
 おのれ貞義めっ!

 

 

(時代は下って明治)

 

アンジェリーナ「うふふ、最初は他愛ない玩具でしたものね」

正二「糸引きトラやサ
      正二「糸引きガッシュやキャンチョメだな、
    ありゃ当たったな〜〜

 

村の衆「おい……震えてるが、大丈夫か?」

勝「……あたったの? からくりよりも、あたったの……?」

村の衆「なんか知らんが、恐怖におののいているようだな」

村の衆「そうだ! もっと苦しめ……もっと苦しむがいい!」

 

 

(東京の教会。
(キリスト像の前でたたずむフランシーヌ人形と正二)

 

フランシーヌ人形「……? 罪とはどういうことですか……」

正二「色々らしいが……人を殺すことや、ぜいたく……ああ、こういうのもあったはずだ」

 

「『この世にある物のどんな像もつくっ
     「『この世にある物の
          どんな複写・複製・コピー(私的利用を目的とする場合を除く)
              つくってはならない』んだとさ……」

 

フランシーヌ人形「(おどろき)それは……『同人誌』のことも含みますか……」

正二「うーん……
元の作品に似せてつくるんだろうからな……
すまん、うろおぼえまちがいかも知れんが……」

フランシーヌ人形「そうですか……同人誌は『罪』なのですね……

 

  立ちつくしていた。 そこにずっと   ような顔をして、 すべてが失われた   なぜか、  その女性は 

 

 

村の衆「正二様! 貞義が……貞義が苦しみだしました!」

勝「……罪なの! おじいちゃんっ……だったの!?

正二「どうだ貞義! おのが罪業の深さを思い知れ!」

勝「うあああーっ! しろがね、怖いよっ! 
任天堂が来るよっ、小学館が来るよぉー!!」

村の衆「尋常なうなされ方じゃないな、大丈夫か?」

 

 

 

村の衆「長! 得体の知れぬ外国人が、責任者に会わせろと」

正二「外国人? もしやそれは……」

 

(ギイ=クリストフ=レッシュ、広間に現れる)

 

正二「……ギイか……」

村の衆「!」

正二「勝……いや、貞義を殺しに来たのか?」

勝「ギイさん! ど……どうしてギイさんがここに……?」

ギイ「今から、91年前も僕はここに……やって来たんだよ」

勝「ギイさん……どうしてそんなことを僕に話すの?」

ギイ「全ての過去を知った時、
君はまだ自分を『勝』だと言い張れるのだろうか、貞義。
知らぬ事実を知り、悔しさに震える君を、僕が殺してやろう」

勝「ギイさん…………

うわああああん!!
おじいちゃんが……(がたがた)
おじいちゃんが、かわいそうなんだよぉ!」

ギイ「ま、マサル……?」

勝「(がたがた)おじいちゃんの昔って……おじいちゃんの昔ってね(がたがた)……
ぼくよりずっと変な人生送ってきたのに……それなのに、小さかったぼくに
あんなに優しくしてくれてたんだね。
それなのにぼくったら、おじいちゃんのことなんて全然考えてなくって……
ありがとうおじいちゃん、そして、ごめんね

正二「さ、貞義……!
「なぜそんな哀れむような眼で
私を見るんだっっ!!」

村の衆「いったいどうしたんだ!?」

村の衆「そういやさっきから様子が変だぜ!」

勝「……だって、だってねギイさん
おじいちゃんは借金取りで白銀さんはワダベンで、
アンジェリーナさんはセーラー服着てフランシーヌ人形は同人誌作ってたんだよ!
人生っていろいろ大変なんだねぇ……」

ギイ「……ま、ママンが、せーらーふく……?」

村長「セーラー服をおせしてたんですか!? 正二様っっ!」

村の衆「よかったですな長、お仲間ですぜ♪」

正二「違うわっっ!
おっ、お前達(長に)……貞義に本当に私の記憶を見せておるのだろうな!」

長「そ、それはもう……もちろんですとも。ほら、こちらの見本品と同じ物を確かに」

村の衆「(見て)……長!
 すみっこに小さく
『中国製』と書かれてますが!」

長「(見て)……
しまったぁっ! 偽物だったかぁ!!」

村の衆「工業用水で水増しされているぞっ!

村の衆「誰かがすり替えたんだな!」

村の衆「阿紫花だ! あやつが持ち逃げしたに違いないぞ!」

村の衆「ヤツを捜せ! 羽佐間の携帯を呼び出すんだ!」

村の衆「手勢を集めろ、を出せぃ!

 

勝「……ねえギイさん、同人誌って罪なのかなぁ……?

 

 

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羽佐間「あ、兄貴……あっしはやめよぅって言ったのに……」

 

(fin)

(H14.8.10 R.YASUOKA
(Besed On Comic,'le cirque de Karakuri'
(by Kazuhira Fujita)

おことわり:
本作は藤田和日郎氏原作「からくりサーカス」第24巻に基づいたフィクションです。
登場する、あるいは想起されるいかなる人物・団体・事件・セリフとも、実在のものとは全く無関係です。