からくりサーカス26巻発売記念おまけ企画
「年寄りは横文字苦手でね

 

 

おことわり:
 本作は、藤田和日郎原作「からくりサーカス」第26巻中の場面を元にしたパロディです。
 本作は原作を題材にした一種の言葉遊びであり、
原作の有する著作権その他の権利を侵害する意図を抱くものではないことをあらかじめお断りしておきます。
 また、本作に登場する、あるいは想起されるいっさいの人物・地名・団体・事件その他はすべて実在とは無関係です。
 なお、本作をより効果的に楽しむために、ブラウザとして株式会社マイクロソフト社製インターネットエクスプローラ(R)の使用をオススメします。

 

 

(雨の中、車を黒賀村へと走らせる才賀正二)

 

正二N「現した! 貞義がついに本性を現した!」

 

(正二の回想。
(電話の向こうから夥しい人々の苦悶の声。
(受話器を手に驚愕する正二)

 

正二「……!!」

貞義の声「もしもーし、聞こえますかー
獄直通ットラインだよ〜〜

正二「貞義! 貞義だな! 今の声はなんだ!」

貞義の声「うーんどうしよう、教えちゃおうかな   
「ヒント、あなたの昔なじみの村です。
その村に、奇病が発生しちゃいました」

正二「黒賀村、黒賀村か!? 貞義、キサマァ〜〜!

貞義の声「来なよ。もちろん、このことは、『しろがね』本部やギイ君には連絡不要だよ」

正二「おのれ貞義! 
「そこで私にもそのカクテルを飲ませるつもりだな!」

貞義「……え? カクテル?」

正二「言ったじゃないか! 地獄直通のホットライムサワーって!」

貞義「ホットライン! ホットラインって言ったの!」

正二「すまん……電話が遠くてね。
地獄直通とは
相当強い酒だなという気はしたんだが」

 

(電話、無情に切られる。
(回想終わる)

 

正二N「(ハンドルを握り)待ってろ、今、すぐ行く!!

 

(雨の黒賀村。
(車を止め、正二、降りる。
ずくめの貞義、
(ゴイエレメス、キャプテン・ネモ、そしてジャック・オー・ランタンの
(三体の
懸糸傀儡を従え正二を迎える)

 

貞義「(両手をひろげ)やあ正二。遅かったね」

 

(貞義が立つのは、村の田畑。
(それは、数え切れない
人々が、
(奇病・
ゾナハ病に苦しんでいる地獄絵)

 

正二「……貞義……おまえ……

貞義「長かったなァ……
これでようやく、正二(あんた)に恨みごとが言える」

正二「貞義……いや、ディーン!
 いったい、何企んでいる!?

貞義「……正二(あんた)は……『人間ダウンロード理論』は知ってるかい?」

正二「人間<転送(ダウンロード)>理論……
アベックが冬の>町中で後ろから覆いかぶさるように抱きついて

『人間<転送(ダウンロード)>〜』
『きゃっ♪』

『ほ〜ら、あったかいだろう?』
『うん。ぽっかぽか』
『どう? アンアン? そこのホテルで、もっとあったかいことしない?』
『いや〜んっ、もぉ〜、たんえっちぃ!』
という会話で臆面もなく自分たちの世界に入りこみ
他人(特に単身者)の神経を逆撫でする理論か……

貞義「さすがだね正二。僕はそれを研究……







できるかよ! 
それは<転送(ダウンロード)>じゃなくて<羽毛入上着(ダウンジャケット)>だよ!」

正二「……これまた失礼。カタカナ語はどうも苦手でね

……ほら、昔は敵性語で禁じられていたじゃないか」

貞義「転送(ダウンロード)! しっかり聞いてくれよ!」

正二「しかし思うんだが、
敵性語って……ドイツ語だったらよかったのかな?」

貞義「…………まあいい。僕は切りかえの早いほうでね。
とにかく、僕は自分研究没頭したんだ」

正二「ダウンジャケットの?」

貞義「違う!

正二「すまん。違ったのか……」

貞義「<転送(ダウンロード)>だって言ってるだろう!
                                  ……切り替えろ、切り替えるんだ貞義……
……長かったよ。
それを研究するのに何十年もかかった……」

正二「そうだろうな。<転送(ダウンロード)>は遠い。
玄奘三蔵法師十数年かかったという。
やっぱりおまえも行ったのかね? インドに」

貞義「……それは<転送(ダウンロード)>じゃないっ、<絹の道(シルクロード)>だよ!」

正二「ええっ、また間違ったか。どうも最近のカタカナ語にはついていけなくてね」

貞義「どう間違えばそうなるんだよ!」

正二「失恋したときはサイババに会いに行くといいらしいぞ。貞義」

貞義「うるさいっ、
よけいなお世話だぁぁぁぁっ!

正二「……まあ、興奮するな。
で、魚六堂(ウォーロード)>と私の質問とどう関係がある?」

貞義「……ま、負けるな貞義、僕は切り替えの早いほうなんだ……。
あれは……僕が、ディーンとしてキュベロンへ……定期連絡に帰ったときだったさ」

 

(貞義の回想。
(キュベロンで、幼時のエレオノールを見かけるディーン)

 

貞義「その『しろがね』はまだ子供だったが   
「僕の初恋の人のたたずまいを100%漂わせていた。
どうすれば
自分とあの娘に
強い絆を作ることができるのだ?

「そのうちに僕は気がついた。

そうか、僕が今実験中の<転送(ダウンロード)>計画が使えるじゃないか」

 

正二「それでエレオノールを吉祥寺のアーケード街に連れ出したのか!

貞義「<駅前商店街(サンロード)>じゃなーいっ!」

正二「では……新宿のショッピングモールだな!」

貞義「<駅前大規模小売店舗(ミロード)>でもな〜〜いっっ!」

正二「そうか違ったか、さすがにローカルすぎたかな」

貞義「……がんばれぇ、がんばれ貞義……こ、今度こそ、で! 
僕の記憶と人格を<転送(ダウンロード)>した『勝』と彼女は、
今度こそ強い絆で結ばれるに違いない! なァ? いい考えだろ?」

正二「な……なんということを考えた……ディーン……。
だいいちな、<転送(ダウンロード)>はデュエット曲じゃないぞ!
 そりゃ確かに『猫の恩返し』主題歌としてリバイバルしたから若い世代にも受けるかもしれんが、そもそも
この曲でB.ダノフが唄いたかったのはふるさとへの郷愁、いやそれだけでなくそれと表裏一体の
アメリカンフロンティアスピリッツを……
とにかく、
そんな古い曲唄ってもエレオノールの心はつかめないと思う!
 まあもっとも、『大きな古時計』もヒットしたからあるいは……

貞義「誰が<田舎道(カントリーロード)>を唄うってったんだよ!」

正二「唄うなよっ貞義、
JASRACが請求書を送ってくるぞ!!」

貞義「唄わないっての!」

正二「唄わないのか?

……そりゃ残念、いい唄なのにな……」

貞義「ああああああああああぁぁぁぁ!
……死ねよ正二ィ!!」

正二「私やアンジェリーナの信頼を裏切ったディーン!
 おまえは絶対に
許さん!

 

義の繰るキャプテン・ネモ、正いかかる。
(正二、大刀を抜き払い、
キャプテン・ネモに一閃を浴びせる)

 

貞義「おー、さすが見浦流目録の腕だ! 
だけど、このキャプテン・ネモが人間なら良かったのにね……」

正二「えろディーン!
 勝との、おまえの意識の
婚礼花道(バージンロード)>は、終わったのか?
 エレオノールに飽きたらず勝にまで手を出すとは、本当に絶対に許さん!

……だがな貞義、残念だが日本じゃ同性婚は認められてないぞ」

貞義「ダウンロード!
 誰がバージンロードだ! まだふざける余裕があるとはな
……はーん……
強気の元は、その車のトランクか。その中に強力な武器があるんだろう?」

正二「いや、武器など入っておらん……」

貞義「いいって、してみなよ

正二「ここで出すのか……? まぁ、男には男の武器があると言うからな……」

貞義「トランクスじゃないトランクだあっっっ! こっこら、脱ぐな正二!!
 ま、どっちみち、君はここから生きて……」

 

(その時、正二、車に乗り込む)

 

貞義「(キャプテン・ネモを操り)逃げるのか、甘いよ!」

 

キャプテン・ネモ、車のボンネットに飛び乗り、正二を襲う)

正二N「(ギアを入れ)私は死ぬわけにはいかない!
「病気の村人と、勝を<六天魔王織田信長(ダウンロード)>から救うためにも、絶対に死ぬわけにはいかない!」

貞義「それは戦国大名フューダルロードっっっ!」

(急発進しバックする車、キャプテン・ネモともども農家に飛び込み横転、
爆発し、炎上

 

貞義「(炎に向かって)どこだ出てこい、正二! あんたの大切なトランクの中の武器が燃えてしまうよ!」

 

(正二、炎の中から姿を見せる)

 

正二「トランクスには武器はなくてよ。
そんなところになど隠すものですか……勝新じゃあるまいし

貞義「トランクスじゃない! トランク! 車のトランクだよ!」

正二「おほほ……ごめんあそばせ。では、脱がなくてよろしかったのね……」

貞義「待っててやるから早く穿け正二! だいたいなんだその喋りは!」

正二「あ……すまん。そういえば、近頃はズボンのことを『パンツ』と言うらしいな。軽井沢のメイドが『私、普段パンツ穿かないんです』等というから心底驚いて、思わずドレスをめくったよ。
本当横文字わからんな。ははは……」

貞義「……あーあ、情けない。
これがアンジェリーナをトリコにした色男かよ……。
刀は火の中、武器なし

正二「男には男の……」

貞義「うるさいれ!……僕のゴイエレメスに叩きつぶされるだけとは……」

 

(重厚なデザインの懸糸傀儡『ゴイエレメス』
(正二に前に立ちはだかる)

 

正二「い……いかんぞ貞義っ、
そりゃすごいのはわかるが、
ちゃんと『ララア・スン専用モビルアーマー』と言わないと
商標法違反で訴えられるぞ!」

貞義「スゴイエルメスじゃなーい! ゴ・イ・エ・レ・メ・ス!
……ここまでくるともう、哀れ以外のなんでもないな」

正二「どうもそうらしい……私にも最期が来たのだな……」
「ただディーン、ひとつ質問させてくれないか?」

貞義「ほ、正二がずいぶんと殊勝なコトだ、なんだよ?」

 

(正二、後ろを振り返る。
(爆発した車が火柱を立ちのぼらせている)

 

正二「……この火、けっこう大きく燃えているな……」

貞義「何を言ってるんだ? こっちを向けよ!!」

正二「<転送(ダウンロード)>には電波法あるいは無線設備規則等で定められた、無線設備それぞれの種別、定格出力、適合周波数帯に適合した機材が必要なんだろう?」

貞義「それは<擬似空中線(ダミーロード)>!
 無線関係者しかわからないネタはやめてくれ!」

正二「わかってる、ちょっとしたミス帝丹じゃないか」

貞義「それを言うなら『ミステイク』!

正二「げ……いっ、今のは軽いオヤジギャグだからな。
断じて言い間違いなんかじゃないぞ」

貞義「いい加減にしろ! 
だから僕はあんたが大嫌いなんだよ、正二!

正二「わかったすまんっ、言い直す。言い直せばいいんだろう……転送(ダウンロード)>にはおまえの描いたアニパロ、オリジナルを同人誌にして投稿するための   膨大なアニメのビデオDVD、雑誌、ゲーム、キャラクターグッズのコレクションと高品質な各種再生機材が必要なんだろう?」

貞義「……それが……どうした……?」

正二「私が、おまえを監視していなかったと思っているのか?」

 

(貞義、怪訝な顔)

 

正二「私が、オタク疑惑のあるおまえただ野放しにしていた間抜けだと?」

貞義「……まさか……まさか……正二……」

 

 

 

正二「今ごろよく燃えてらしてることよ。大事なその方のコレクションが」

 

 

 

貞義「し……正二ィィ〜〜!

正二「その方の負けね。おほほほほ♪」

貞義「そりゃ<漫画映画同好者専門誌(ファンロード)>やんけ〜〜〜!」

 

(貞義の叫びと同時に、
(ゴイエレメスの
が炸裂、正二を叩き伏せる。
(倒れた正二の頭部を、ゴイエレメス、踏みつぶす)

 

貞義「ちっ、莫迦め!!」

 

(貞義、正二の最期を見届けるのももどかしげに背を向け走り出す)

 

貞義「はったりだ! そうに決まっている!
 でも、確かめなければ!」

 

(走りかけた貞義、突然立ち止まる。
(それから振り返り、読者に向かって
カメラ目線

 

貞義「断っておくが、ファンロードのことじゃないからな」

 

(貞義、踵を返して走り去る。
(その姿が土煙の向こうに見えなくなってしばらくして、
(地中から、
革の手袋が現れる)

 

正二「トラン……ク、の中に武器は入ってなかった……でもな……」

「私に似せたブルボン王朝最後の王妃(マリー・アントワネット)は入っていたのさ」

 

(地面の下に埋まっていた正二、起き上がって全身を見せる)

 

正二「ディーン。私は、死ぬわけには行かなくてよ。おほほほ♪

あら?……もしかして、マリオネット、だったかな……?

 

(fin)

 

(H15.1.21 R.YASUOKA
(besed on comic,
('Le Cirque de Karakuri'
(by Kazuhiro Fujita)