彼の名は加納。
……闇を切り裂く一陣の白い旋風。
殺し屋集団『黒賀の人形遣い』の中で
最強の称号を恣(ほしいまま)にするキラー・エリート。
華麗にして大胆、冷酷にして颯爽。
繊細な指先で死を紡ぐ、純白の死の指揮者。
大都会の陰に暗躍し、今日もアスファルトと血の海を渡る白い旋風。
ただ……。
「もしもしパパだよォ♪……いい子にしてたかなぁ?」
「もしもしパパァ〜? うん! あたしねぇ、今日もイイコにしてたよ」
「そうかそうか! うんうん……おまえはいい子ですからねぇ♪」
「ねぇパパぁ……パパ、いつ帰ってこれるの? あした?」
「う〜ん……ごめんねェ、パパ、明日は帰れないなぁ……」
「あさって?」
「……明後日も、ダメですねぇ……」
「じゃあ……あさってのあした?」
「ううっ、ごめん……パパまだ帰れないんですよぉ……」
「あさっての……え〜と……あさってのあさって?」
「……ごめんねぇ……」
「えーっ、そうなのォ!……ねぇ、パパァ……パパ、あたしが悪い子だから帰ってこないのぉ?」
「ちっ……ちがう! 違うよっ……なんでおめえが悪い子なんですかいっ! おめえはね。パパが知ってる子供の中で一番いい子ですぜ。世界一……いや宇宙一いい子です!」
「ほんとに? あたし、いい子? パパ」
「ホントのホントのホントですって! こうなりゃパパ、こんなお仕事一日も早く終わらせて、お家に帰りやすからね♪……そうだ、帰ったら一緒に遊園地行こう! 遊園地で一緒に、メリーゴーランドに乗りやしょうっ。ね♪」
「遊園地? わーいわーい、遊園地だ! ありがとうパパ、パパだ〜い好き♪」
「そうかいそうかい……パパも大好きですよォ♪ だから、成田のおばちゃんの言うことよく聞いて、きちんと繰りの練習しとくんですぜ。そうだそれから、もし誰かに苛められたらパパにきちんと言いなせえよ。そいつ、殺してやるから……じゃ、パパにおやすみのキスをしてくんな♪」
「は〜い♪ パパ、おやすみなさ〜い……(チュッ)」