からくりサーカスオリジナルストーリー
CD
(コミカルディフォルメ)劇場
「ぷっちひみつ日記帳〜輝け負けるな羽佐間編〜

 

▽月○日

 

きょう よなかに むらのはずれのちゅうしゃじょうへ

さはらに もってく にんぎょうはこびの そうこうしゃを

こっそり みに いきました。

あした ぷっちは このくるまに つみこまれ

それから くるまごと つつみがみで こんぽうされて

あしはなと じょーじに ひきわたされるです。

だから どんなくるまかなと おもって

こっそり みにくることに したのです。

 

あしはなは さっきまでやってた そうこうかいの えんかいで

ぐでんぐでんに よいつぶれて ねてますし

じょーじは じょーじで えんかいのとちゅう

ぱうるまんに ぜんぜんはがたたなかったのが ばれて

それを あしはなや おざきや むらのみんなに わらわれたので

きずついて きっと がっこうの うらやまで

しくしく しくしく ないてるに ちがいないです。

くるまをみはるように おさに めいれいされてた かないも

きっといまごろ こっそりと かのうのいえに よばいにいって

また いつもみたいに ふんへたねとゆわれて わらわれて

たぶん じょーじといっしょに うらやまで ないてるはずです。

だから くるまのまわりには だれもいないと おもってました。

 

そしたら くるまのそばに あやしいひとかげが いました。

もしかして くるまどろぼうが きたのかなと

それとも のらいぬか のらくまか のらますむらかと おもいましたが

ますむらはいま えんかいの たべのこしを くいあらしてるので

のらますむらじゃなく どろぼうだと わかったから

どろぼうを ぶんなぐって やっつけようと

こんぼうをかまえながら すこしずつ ちかよりますと

ひとかげは どろぼうでなく はざまでした。

どろぼうじゃないので ちょっと ほっとしましたが

せっかく こんぼうをかまえたのが もったいなくて

ちからまかせに そのまま はざまを なぐりたおしました。

ふつうのにんげんなら そくしだけど

はざまは あしはなに きたえられてて

なぐられなれてて しななくて へいきでした。

あたたいてえな なにしやがんでと はざまが

あたまの こぶたんをさすって おこったので

ごめん どろぼうと まちがえたんだよと うそをゆいますと

ああそうか ぷっち そりゃおどかしてすまなかったな と

すなおに はざまは あやまりました。

はざまがすなおで うたがうことをしらなくて

ひとの ゆうことを そのまますなおに

がくめんどおりに うけとめる せいかくで

とてもよかったなとおもいました。

 

なんでえぷっち おめえも ねむれなかったのかよ

ははあん さてはおめえ さはらにしゅっぱつすんのが

ふあんになって ねむれねえんだな と

はざまが すこしにやけて ゆいました。

にんぎょうがねむくなるわけ ないだろう

はざまはやっぱり ばかだなあと ゆいかけましたが

それにかまわず はざまが せをむけて

ほらぷっち こいつをみろよとゆって

そうこうしゃの しゃたいにある

にんぎょうをいれとく しりんだーを ゆびさしました。

みると そこには へたくそなじで

あ とか じー とか ぶい とか かいてありました。

おいおい こりゃぶいじゃなくて えるだぜ

あにきたちが にんぎょうを とりまちがえねえように

あっしがこうして みわけできるように かいたんだ

とくに あにきのにんぎょうは

(つまり ぷっちのことですが)

ちゃんと あにきにも よんでもらえるように

こうしてにほんごで かいたんだぜ

それにじつは この あのじはな ぷっち

あしはなのあじゃなくて あにきのあなんだぜ

あああにき あっしのきずかい わかってくれるかなあ

そこまでゆうと はざまは おおきく いきをつきました。

 

ふうんそうなのと てきとうにあいずちを うちながら

しりんだーの へたくそなじを みてますと

とつぜん めいあんが おもいつきました。

あしはなみたいな へたくそに あやつられないよう

あのじの しりんだーじゃなくて

じーか えるか べつのしりんだーの にんぎょうと

いれかわって つみこまれたら いいな

あしはななんかより うまくあやつられて かつやくするから

きっと ながく とうじょうできるに ちがいない

えるなら るしーるの にんぎょうとして

じーだったら ぎいのにんぎょう と おもいかけて

もしも じーが じょーじのことだったら

あしはなより ひゃくばいまずいと きずいたので

やっぱり るしーるのにんぎょうと かわろうと おもいました。

そこでひっそり えるのしりんだーに もぐりこもうとしたら

おいぷっち どこいくんだと はざまに とめられました。

だからはざまに あしはななんかに あやつられないように

るしーるの にんぎょうと とれーどしたいんだと ゆいました。

 

すると はざまは おいおいぷっち

るしーるの あんじぇりーなにんぎょうには

る きゃ きゃとるぴ きゃぴたる きゃぴぴ きゃぴきゃぴ

いや い いやとにかく さいこのよんたいのにんぎょうどもを

ひかえよと ゆって ひかえさせる やくめってのが あんだぜ

そいつは おめえにゃできねえだろ とゆうので

ぷっちは へいきだよ とこたえました。

だって ふらんにんぎょうと あんじぇにんぎょうの みわけもくべつも

できないような できそこないどもなら きっと

ぷっちと ふらんにんぎょうだって まちがえるさ

ぷっちがむねをはって ひかえよと ゆったら きっと

やつらはじょうけんはんしゃで へへーとひかえるよと ゆいますと

ううううん たしかにそうかもと はざまが うでぐみしました。

 

それから はざまは ずいぶんながく かんがえて

あ だけどよ ぷっち

おめえがよ あんじぇにんぎょうの かわりになって

それであにきに あんじぇにんぎょうが あたっちまったら

もう あにきはきっと たたかいそっちのけで

あんじぇにんぎょうと あそんじまうぜと ゆいました。

どんなふうに あそぶのと ききますと

そんな あっしのくちからとてもそんなことはと ゆって

はざまは ちょっとほほがあかくなって だまってしまいました。

それできがついて それもそうだねと おもったので

やっぱり あんじぇにんぎょうと いれかわるのは やめにしました。

あしはななんかに あんじぇにんぎょうと あそばせたら

からくりさーかすが せいねんこみっくに なってしまい

ふぢたせんせが せいねんこみっくさっかに てんしょくして

なつのこみけっとで ちょうかげきからくりぼんを かくようになったら

ふぁんがいっぱい さっとうして しょうぎだおしになって

おおぜいの ひとに めいわくがかかると きずいたので

なくなく やめることにしたのです。

もし あしはなが じゅうはちきんなんかに ならなければ

ぷっちは あんじぇにんぎょうと いれかわって

きっと ぷっちがるしーるに かっこよく あやつられたりして

どっとーれなんか いっぱつで やっつけることが できるのになと

ちょっと ざんねんに おもいました。

 

そしたら えらいぷっち わかってくれたんだな

そうゆいながら はざまが いっぽんのにほんとうを くれました。

かたなのかたちが にてたので

まるで ざんてつけんみたいだね とゆいかけましたが

ざんてつけんなんてゆったら もんきーぱんちせんせに おこられるから

(それでなくても あしはなが もみあげなんて のばしたので

(きっと もんきーぱんちせんせも きをわるくしてる だろうから)

ざんざんざんと くちごもって かたなを うけとりますと

こいつはな はざまけに だいだいつたわる めいとうだ

それを にんぎょうが つかえるように こしらえなおしたんだぜ

ほら せんべつがわりに おめえにやろうと

かたなを さしだして はざまが ゆいました。

だから ありがとと おれいをゆいますと

なあに れいならいいってことよ

それよりも こいつを あっしだとおもって

こいつで あにきを しっかり まもってやってくれよ

さはらにいけねえ あっしのぶんも

おめえにゃ あにきを まもってもらわなきゃなと

すこし さみしそうなかんじで はざまは ほほえみました。

 

はざま ほんとは さはらに いきたいんだねと ゆいますと

け なあに と はざまが こたえました。

たしかにな ついてきてえのは やまやまだが

だってよ あっしにはよう あにきがいねえまも

くろがのむらを しっかりまもるって やくがあんだ

おざきや ますむらや かのうらを たばね

おさのことを ささえて やんねえとな

ほら あにきがかえってくる そのひによ

むらが がたがたに なってちゃ いけねえもんな

そうゆうと はざまは くるっと せをむけて

そうこうしゃの しゃたいを ごしごし みがきはじめました。

 

だからよ いまのあっしに できんのは

すこしでも あにきに きもちよく しゅっぱつしてもらえるよう

すこしでも あにきが きもちよく にんぎょうを はこべるよう

こうして くるまを ぴっかぴかに みがくことぐらい だからな

よおし あにきの のりごこちの いいように

いまからてつやで こいつを せいびしてやるからな

そう まるでひとりごとみたいに ゆいながら

はざまは せっせと くるまを みがいてました。

 

おつきさまが すごく きれいに ひかってて

それが はざまがみがいた くるまの しゃたいに

きれいに きれいに うつってました。

 

はざまが はーって いきを ふきかけると

おつきさまは ちょっと くもりますが

それを ごしごしと みがきますと

おつきさまは まえよりずっと

すごく すごく きれいに なりました。

 

ぷっちは そんな はざまをみながら

はざまのくれた かたなを てにとって

ぬいたり ふったり してみました。

はざまのていれした かたなは

くるまといっしょで やっぱり ぴっかぴかでした。

ちょっとだけ はーとふるなきぶんに なったので

だから ぷっちは もういちどだけ

はざまの おおきなせなかに こっそり

ありがとはざまと ゆって あげました。

さはらにこれない はざまのぶんも

あしはなと いっしょに がんばって

なるみかおまけに かつやくしてやろうと おもいました。

 

そしたら そこへ あしはなが きました。

ぐでんぐでんに よっぱらってるようで

あしもとをふらつかせながら こちらにむかって あるいてました。

なんか はなうたも うたってるようですが

かしも きょくも めちゃくちゃなので

なんのうただか ぜんぜん わかりませんでした。

こうゆう おうたなら ねっとに けいさいしても

じゃすらっくに おこられたりしないのかなと おもってたら

けはいをかんじて はざまが ふりむいて

あああにきと すっとんで かけつけました。

だいじょうぶですかい さむいからきをつけてくだせえと ゆって

はざまが わきから あしはなを ささえました。

すると あしはなは

おお すまねえなじょーじさん

やけにこんやは しんせつじゃねえですかいとゆって

はざまのかみのけを くしゃくしゃ かきまぜました。

あしはなが くちを ひらくたび

さけくさいいきが ぱああと ひろがりました。

 

あ あにき ちがいやす はざまですぜ

あっしは じょーじなんかと ちがいやすぜ

やですぜあにき こんなよっぱらっちまってと はざまがこたえますと

あしはなは ぼーっとしためで はざまをみて

あたまのさきから つまさきまで はざまをみて

それから やっぱりじょーじじゃねえですかい と ゆいました。

ちょ ちょっとまってくんな あにき

あっしを よりによって あんなやろうと まちがうなんて

いくらよってても かんべんしてくだせえよ

そうゆって はざまは

さけくさいのも ものともせず

あしはなの かおに じぶんのかおを ちかずけました。

それから ほら よくみてくだせえよと ゆいました。

あしはなは そのはざまのかおを じーとみて

それから しばらく かんがえこみました。

 

ね ね とはざまが ゆいますと

まだしばらく かんがえこんでから

ねむたげなめを おもそうにひらいて あしはなは

なんだ じょーじじゃなく はざまじゃねえかとゆいました。

はざまは おおよろこびで そうですはざまです

まったくあにきも ひとがわりいなあとゆいますと

あしはなも こたえて すまねえな はざま

なにしろあんた もうずっとからくりにでてこねえもんだから

すっかりわすれちまってたんですよ と ゆって

じゃ あたしはこんやはおさと だいじな やくそくがあっから

こっからさきは ひとりで いかせてもれえやすぜ

おめえも また さんでーにさいとうじょうできたなら

そんときにでも また あいやしょうぜと そうゆって

あしはなは ひとりで よろよろあるいて いきました。

 

おつきさまのひかりが あたりをてらし

ふくろうの こえだけが ほーほーと きこえてました。

 

みると はざまは

くるまのよこで りょうひざをついて すわりこんで

くちのなかで なにやら ぶつぶつ ゆいつづけてました。

くるまのかげのせいで つきあかりも とどかないので

まるで ふじこふじおえーの まんがのきゃらみたいに

かおのまんなかにだけ かげが ついてました。

なんかゆってあげようと おもったのですが

あんまりおもくるしくて ことばが でなかったので

とりあえず かたなのさやのさきっちょで

かるく はざまのかたを ぽんと たたいて あげました。

そしたら はざまは ぼそりと

なあぷっち なんで

なんで ふぢたせんせは あっしだけ

さいとうじょうさせて くんねえんだろうな と ゆいました。

どっか あっしに いけないとこが あんのかなと

あしをくみなおして りょうひざを かかえて ゆいました。

もしも いけねえとこが あんのなら どんなことでも

いっしょうけんめい がんばって なおすのになあ

そうゆってから はざまは ひざに かおを うずめました。

りょうひざを きつくだきかかえた ものですから

まるで たいくずわりみたいに なりました。

 

これは なにかゆって はげまさなくちゃと おもったので

それで しばらく かんがえて

ねえはざま そんな きをおとさないでよ とゆいました。

だいじょうぶだよ しんぱいしないで

だって ぷっちやぐりもみたいな

もうにどと でてこなさそうな きゃらまでが

さいとうじょう できたんだよ

ほらほら じょーじみたいなつかいすてきゃらだってそうだし

そうそうそのくせ どみみたいな かっこいいきゃらにかぎって

あつかいがぞんざいだったりもしてるから

だからだから はざまみたいな ぶさいくなきゃらこそが

はざまみたいな いてもいなくてもどうでもよさそうなきゃらこそが

きっとさいとうじょうさせてもらえるんだよと ゆって

さいごにひとこと ふぁいとと ゆってあげました。

 

そしたらはざまは なぜかとつぜん

うわああああと さけびました。

ううう どうせあっしは いてもいなくてもかんけいねえ

ただのぶさいくなさしみのつまてきつかいすてきゃらなんだ

くそう もうこうなったら

あっしだって そうこうしゃにのりこんで さはらにいってやるぜ

それで あんじぇにんぎょうといれかわって

あにきと いっぱい こしがぬけるまで あそんでやる

そして あんじぇにんぎょうのかわりに だいおーじゃで ひかえよと ゆって

それから にんげんたいほうになって こせいだーになって

あいぜんぼーぐといっしょに きょうりゅうぐんだんと たたかうんだと

もとねたもわからない たわごとを いっぱい わめきはじめました。

 

はざまがわめくと こないだのにっきと おなじてんかいになって

どくしゃのひとにおこられて まずいと おもったので

とりあえず かたなをぬいて

えい えいえいえいと きあいをいれて きりました。

それから また えい やーとゆって きりますと

うまく せいこうして はざまのあたまの かみのけを

いっぽんのこらず きりおとすことが できました。

また つまらぬものを きってしまったと

きめぽーずを とって ゆいますと

(もんきーぱんちせんせ ごめんなさい)

かみのけを きりおとされた はざまは

じぶんが つるっぱげになったのに きがついて

われに かえって わあああと さけびました。

それから あたまを おさえながら

しくしくなきながら おうちへと かえってゆきました。

はざまのあたまに おつきさまがうつって

きらきら きらきら ひかってました。

 

はざまがかえったあと ひとりきりになりましたが

やっぱり さみしいので かえりました。

かえるまえに ちょっとだけ

そうこうしゃの しゃたいを みがきました。

ぴかぴかになった ぼでぃをみると

おもわず はざまのあたまを おもいだしました。

かみのけが はえそろうまでは しばらく

からくりに さいとうじょうできないかなと おもったら

ちょっぴりだけ かわいそうになりましたが

だけど (自主削除)どうし ふぢたせんせと きがあって

ふぢたせんせに きにいってもらえるかも しれないから

そのぶん さいとうじょうが はやまるかも

しれないぞと きがついたので

はやく はざまが さいとうじょうできるように

おつきさまに おいのりしながら かえりました。

おつきさまは やさしく やさしく そらに うかんで

きれいに きれいに ひかってました。

 

おしまい

 

(H13.10.19 R.YASUOKA
(Based on comic,
('Le cique de Karakuri'
(by Kazuhiro Fujita)

 

おことわり:
本作はフィクションです。登場する、あるいは想起される人物・団体・事件その他は実在のものとは無関係です。