からくりサーカスオリジナルストーリー

「羽佐間師範が贈る 黒賀流ゲーム道場」

 

 押忍! あっしは黒賀流ゲーム道場師範、羽佐間ですぜ。

 門下生の諸君、新世紀を迎えてもゲーム修行にいそしんでやすかい? 21世紀はヴァーチャル・リアリティの新時代、門下生のみんなにゃ切り込み隊長になって新世紀を切り開いてくだせえ。そのためにも今日も修行ですぜ、押忍!

 さて、今月もあの大ヒット熱血欧風機巧恋愛シミュレーション『からくりSWEETDAYS』シリーズ最新作、『からくりSWEETDAYS3〜時の翼の天使』を伝授しやす。……発売から6ヶ月たった今でも売り切れ続出の超人気ゲーム『からDAY3』、みんなはもう手に入れやしたかい? あっそこのあんた! 手に入らねぇからって、小学生からカツアゲしちゃダメですぜ! 今月からは先月までの攻略法をちょいとお休みにして、おなじみゲームメーカー「サイガ玩具」の広報担当にして『からDAY3』のトータルプロデューサーでもある、ふフィ田わひ郎さんにおいでいたでぇて、『からDAY3』の開発ウラ話や魅力をたっぷり語っていただきやすぜ。それじゃふフィ田さん、よろしくお願いしやす。

 

 

ふフィ田(以下ふ)「こんにちは師範、よろしくお願いします」

師範(以下師)「いやぁふフィ田さん、『からDAY3』、すげぇ人気ですねぇ」

ふ「ありがとうございます。おかげさまで『からDAY3』も累計出荷数が150万本を越えまして、年内に300万本達成も夢ではない勢いで売れています。まぁ、売上数がすべてじゃありませんが、それだけ大勢のユーザーさんの支持とか期待とかをいただいての数字であることは確かですので、本当にありがたいお話です。私も含めてスタッフ一同、おおいにうれしがっています。ホントありがとうございます(礼)」

師「どういたしやして(礼・笑)。それもやっぱし、ふフィ田さんが製作に携わったからじゃねぇんですかい?」

ふ「いやあ、そんなことは……(照)」

師「そういや、いつもは広報のふフィ田さんが、なんで今回は製作に回ったんで?」

ふ「それなんですが、前2作……これもおかげさまでヒットしたんですが、『からDAY』シリーズの広報でいろんな雑誌の方やショップの方、それからユーザーさんとお話をする機会がありまして、そのときにいろいろなご要望を……雑談とか、取材とかを通じていただいてるんですけど、もちろんそういうのはきちんと開発スタッフに伝えてるんですけど、どうしてもそのニュアンスとか伝えきれないのがあって、それで、だったら何とか自分が製作にタッチできないかなぁ……ってずっと思ってたんです。それで決心して、社長に直訴してトータルプロデューサー、つまり製作の総責任者としてスタッフに参加することができたんです」

師「……そうですかい。でも、社長って善治でしょ? あの石頭がよくOK出したもんですねぇ」

ふ「それは……詳しくは企業秘密なんですが、まぁ……ある少年の助力があったとだけ言っておきましょう(笑)」

師「助力ねぇ(笑)」

ふ「もっとも、広報の仕事も今までどおりさせられましたけどね。『両立できるならやっていい』というのが条件でしたから」

師「二足の草鞋ですかい……善治のヤローも人使い荒ぇよな」

ふ「はい、荒いです(笑)。たしかに仕事はいろいろ大変でしたが、でもそのおかげで思いどおりの、皆さんの要望を反映させたゲームを作ることができましたから。悔いはありません」

師「ユーザーの意見ですかい。それが例えばEVSですね?」

ふ「そうです。もっとも多かったご要望がこのEVS(*1)の改良ですね。前作『second season』にも試験的に導入したんですが、声を通じてよりキャラに感情移入できると好評だった反面、まだまだ不十分というお叱りももらっていましたので、今回はここを重点的に直したんです。その結果、全キャラの全セリフにEVSを導入することで、同じキャラでもその日の感情パラメータにあわせて微妙に口調や声のトーンが変化する、より自然なボイスシステムが誕生したんです……まぁ、そのせいで容量も増えて価格は上がりましたが(笑)」

 

*1 EVS:Emotionic Voice System。サンプリングによって声のイントネーションを調節して、よりリアルな発声を行わせるシステム。

 

師「DVD3枚組じゃあね(笑)。そういや、声に関しちゃ、ダブルキャストシステム(*2)なんてのもやってやすね」

 

*2 ダブルキャストシステム:一人のキャラクターについて二人の声優のアフレコデータを記録し、好きな声優を選んでプレイできるシステム。『からDAY3』では勝、エレオノール、阿紫花、ギイなど主要キャラについてそれぞれ声優を選択できる。

 

ふ「はい。でもあれは実は、声優のキャスティングが難航した名残です(笑)。たとえば阿紫花を誰に演じてもらうか、ユーザーにアンケートをとったらですね、女性は潮沢兼人、男性は若元規夫をと支持がまっぷたつにわかれる傾向にあるんですよ。それで、どっちの人にやってもらおうかスタッフでいろいろ話し合ったんですが、なかなか結論が出なくて……会議も夜遅くなってきて、疲れて眠くなって腹も減ったとき、誰かが『もういーや、両方やらせようぜ』って言って。で、両方採用するためダブルキャストにしたんです(笑)」

師「その誰かって、ふフィ田さんじゃねーんですかい?(笑)」

ふ「私じゃないですよ(笑)。私は『寝るなー! 働けー!』って怒鳴ってただけ(笑)」

師「でもそれがまた評判いーんですから、世の中わかりやせんぜ(笑)」

ふ「怒鳴った甲斐がありました(笑)。ダブルキャストは『レ・ミゼラブル』とか舞台公演でも使われている手法ですからね。これでゲームが芸術作品に一歩近づいたかな、と自負してます(笑)」

師「そうですかい、キャスティングはなかなか難しいもんですねぇ」

ふ「ええ。ユーザーの数だけキャスティングがありますから。スタッフ同士でも意見が違って激論激論、果ては外に出て殴り合いでしたよ(笑)。だから、皆さんすべてに納得いくキャスティングにならなかったかもしれません……その点は反省してます」

師「やっぱり……いえあっしもね、羽佐間役が響里大輔ってのがどうも納得いかねぇんで……速見奨とか鈴沖洋孝とか、もっと二枚目っぽい声だと思うんですがね?」

ふ「羽佐間は満場一致でしたよ(笑)」

師「うっ……(絶句)。ところで、故・潮沢さんのアフレコなんざ、ファンにゃたまんねーですよね」

ふ「潮沢さんは……本当に惜しい人を亡くしました。実は三日前まで収録に参加いただいてて、役作りについてお話ししていたので……ご冥福をお祈りします」

師「収録途中だったんで? んじゃ、残りのセリフとかどうしたんですかい?」

ふ「代役をたてることも考えたんですが、生前の潮沢さんが、ものすごく意気込んで吹き替えしてくださってたので、私も含めてスタッフ全員が、なんとか潮沢さんの声で完成させようと話し合いまして、それで、過去に潮沢さんが出演された作品をチェックして、ふさわしいセリフをサンプリング加工して使いました。ご承知のとおりゲームの発売が予定より八ヶ月遅れてしまいましたが、その期間の半分ちかくがこの音声加工と、それから版権取得のための交渉だったんです」

師「サンプリングですかいっ、ってことは全部本物の潮沢さんのセリフで?」

ふ「そうです。ゲームでの役に合わせて語調やアクセントを加工してはいますが、だいたいはマニアの方が聞いたら、どの作品のどの役のセリフかわかると思いますよ」

師「借金鳥警部(*3)やマ・クロベェ(*4)のセリフなんかもあんですかい?」

ふ「オーエルシュタイン(*5)も使ってます(笑)。ここで詳しくは話しませんので、がんばってさがしてみてください」

 

*3 借金鳥警部:アニメ「名探偵コンナン」の登場人物。クールなエリート刑事で某大手金融会社の御曹司。

*4 マ・クロベェ:アニメ「機動戦士クロヨンダム」の登場人物。『黒い三悪人』を率いてマクロストーンを蒐集する冷酷な軍人。

*5 オーエルシュタイン:OAV「銀河栄養伝説」の登場人物。銀河帝国の女子社員。

 

師「そうですかい……すげぇな、サンプリングって……」

ふ「潮沢さんがお亡くなりになったのは不幸なことでしたが、それをきっかけにサンプリングの新しい可能性に挑戦できたと思います。技術的な問題で今回は見送ったんですが、声優さんの声紋、つまり発声の周波数とかテンポとかタイミングとかをデジタライズできれば、声優さんが吹き替えなくとも、その人の声を自由自在に再現することだって不可能じゃないんです」

師「自由自在にって、それじゃ声優がいらなくなんじゃねーですかい?」

ふ「いや、それはさすがに哀しいと思います(笑)。たとえば、すでにお亡くなりになった方の声でアフレコしたり、プレイヤー自身の声でキャラクターにしゃべらせることだってできたりして、より理想的なキャスティングができるようになるんじゃないでしょうか……もっとも今の技術では、DVD十枚組くらいになってしまいますが(笑)」

師「それじゃ売れねーって(笑)」

ふ「あと、声に関連してぜひおすすめしたいのが、ゲームと同時発売した専用コントローラーについた『からDAYフォン』なんです。サラウンド方式専用ヘッドフォンで臨場感が増すのはもちろん、ミニヒーター付内蔵マイクロエアポンプで、プレイヤーの耳元に阿紫花やギイの甘い囁きと熱い吐息が直接届くんです。これが特に女性ユーザーから好評をいただいてます」

師「あ、ショップで体験デモ見やしたぜ。女ども、みんな腰くだけになってやんの」

ふ「いやあ、適度な強さとぬくもりの風を作るのにものすごく苦労しました。スタッフ同士で息を吹きかけ合って確認しましたから(笑)」

師「すげぇ光景だ(笑)」

ふ「それがゲームの完成後もしばらく流行りましてね(笑)。ほかにもPS2関連商品で初めて年齢対象制限を受けたSVS機能(*5)も搭載してゲームがぐんとリアルになるおすすめの一品です。税別19800円です(笑)」

 

*5 SVS機能:Sency Vibration System。24個のセンサー付振動機を(自主削除)等全身各所に取りつけ、振動で(自主削除)して(自主削除)や(自主削除)を刺激して(自主削除)、(自主削除)を(自主削除)させる機能。

 

師「さすがは広報のフフィタさんですねぇ(笑)。ヘッドフォン付アナログコントローラーですかい……こうなると、マイクもつけて音声認識機能がほしくなりやすねぇ」

ふ「むむっ、それは……そうするとDVDがまた増えますね……(笑)。でも、そういうユーザーさんの要望を積み重ねてきたのが『からDAY』シリーズですから。さいわいウチには『ギーマン』(*6)で培った音声認識システムがありますし、次回作以降の作品でいつか、キャラと直接会話できるようにしたいですね」

 

*6 ギーマン:1998年発売のDC用育成型SLG。口の減らない人形使い『ギーマン』と対話しながら調教・飼育するゲーム。

 

師「そいつは楽しみですぜ。おっと、そろそろページが尽きそうなんで続いての話は次号にしてくだせぇ」

 

 

 てなワケで、ふフィ田さんとの対談が盛り上がりまくって、今月号じゃおさまんなくなっちまったんで続きは来月号に載っけますぜ。次回はキャラクターの話で、ぐんとひろがった『からDAY3』ワールドの魅力を語ってもらいやすから楽しみにしててくだせぇよ。

 じゃ門下生諸君、来月号まで修行にいそしんでくだせぇよ、押忍!