すぐ風化しそうでちょっと心配です

 

義サマっ! 右手を大きく開いて前に突き出して!」

「こう!?」

「そう! それから拳をすぼめるように握りながら、顔の横までまっすぐ後ろに引いてッ!」

「こ、こうっ?」

「がちょ〜〜ん!」

「グリポン君……!」

「冗談ですよ貞義サマ〜〜。それじゃ今度は、腕を前から上に挙げて……」

「こう?」

「……背伸びの運動から〜〜♪ 1・2・3・4……♪
「だ、だって貞義サマ、いつも人形繰りの前に準備体操してたじゃないですかっっ、忘れたんですか!」

「そんな事やってる場合じゃないでしょ!」

「ぐぐぐ、苦しい貞義サマ……!!
 わかりましたよ、それじゃ左右それぞれの手の、親指と中指と薬指をくっつけて」

「……こう?」

「違う違う、残りの指はちゃんと伸ばして!
「……それを左手から順番に、手の甲を口元へ引き寄せて!」

「こう?」

「もっと速く!」

「こう?」

「もっと軽快に!」

「こ、こう?」

「とびマス♪とびマス♪」

「……この〜〜!」

「ワッ! ごめんなさいごめんなさい……! それじゃ今度は……」

「まさかと思うけど『三瓶で〜す』なんて絶対やらさないでよ!」

「……ちっ……」

「グリポン君! 今『ちっ』って舌打ちしたでしょ! ねえ!」

 

 

 ……どうやらグリポン君、地下室でヒマなとき

 ずっとテレビを見てたようです……。

(fin)

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