(激闘の末、息も絶え絶えのチャイナ・ホー。

(その目鼻から体液が滴っている。

(ナルミ、ホーにとどめの一撃。

(ホー倒れ、コマの外へと消えていく)

 

(中略)

 

(パンタローネ、怒りの形相で師父めがけ突進する。

(師父、ためらいなくダイナマイトのスイッチを入れる。

(カッという擬音、閃光。

一瞬(※注4)のち、

(四方大爆発。跡形もなく吹き飛ぶ)

 

※注4

アイヤー、やられたアル。ナルミたいへん強い、ケリ強い。アバラさらに二三本折られたアル、右手も火傷で引きつるアル。まるでヒョウね。意味わからんヒトうしとら32巻読むヨロシ、ないヒト買うヨロシ。持てるヒトまた一冊買うヨロシ。いぱい買て読めばフヂタセンセ喜ぶアル。ハナシそれた。ワタシもうボロボロ、今のケリ、トドメだたアル。これで終わりヨー、ワタシ出番終わり、コレで終わりアルネ。短い出番だたアル、きと誰も皆忘れるネ。皆忘れる、だからバレンタインもチョコない、クリスマスでも読者からプレゼント来ないアル。これだけ書けばきと誰か送てくれる、送り先サンデー編集部宛ヨロシ。必ず気付と御中書くヨロシ。またハナシそれた。でもやと楽なれる。短い人生、違た短い人形生だた。でも悔いない。我が人生、違た我が人形生に悔いナシアルよ。意識薄れる中、今までの出来事、コレ走馬燈のよに浮かんできたアル。短かたけど悔いない人形生回想できるネ。初めて意識持た、人造体液カラダに回て、初めて見たモノ、ぼやけた人形。ぼやけた像が眼の焦点あて見えてきたアル。髭面の、ヘンな服着たヘンな人形見えたアル。第一印象ヤな予感。でもワタシ作た、作てくれた偉い偉い人形、そう思たから尊敬の眼差ししたアル。尊敬の念思たアルネ。そしたらヒゲ言た、「わしはパンタローネじゃ。お主は、四番目のチャイナ・ドールじゃぞ」そしたらヒゲしばらく間おいたアル、ホントはチャイナドール陶器人形のこと、だからワタシチャイナドール違う思た。でも言わなかた。そしたら、パンタローネ続けて言た。「……だから、おまえはチャイナ・ホーじゃ♪」寒い。初めて寒さ感じたアル。四番目でホー、芸ない思た。四番目でホー、だたらCV、島津冴子アルか思た。ならいい思た。でも違た、たぶん、緒方賢一。または、肝付兼太。はせさん治でも可思う。だからやぱり芸ない。不安。初めて感じた不安アル。でも不安ヨロシない。仮にもワタシ作てくれた人形、偉い偉い人形、そんな偉い偉い人形に不安感じる、これダメ思た。ワタシダメ、少し反省したアル。人を疑う、違た人形疑うヨロシくないアル、ワタシ作てくれた偉い偉いパンタローネ信じるヨロシ思た。でも間違い。それ、とんでもない間違いアた。子供は親、選べない。人形、作る人形選べない、これたいへん不幸アル。すぐ判た、五秒でわかた。パンタローネ芸好き、フランシーヌ様笑わそ思て努力。努力感心アル。正義友情努力アル。でもヘタ。だから努力ムダ。世の中ムダな努力アル、パンタローネ見て知たネ。パンタローネ次々新芸見せる。怒濤のよに思いつく。テレビ見る、ラジオ聞く。寄席見る、大道芸見る。とても熱心アル。いつもメモ片手アル。よく見て学ぶ、応用する。アレンジする。アレンジして新芸作る。作て発表する。でもヘタ。やぱりヘタ、笑う全然無理。皆笑わない、笑えない。これ大変カラい、違たツラいアル。誰も笑わない、だから作た。だからパンタローネワタシ達作た。実はワタシ達、実は皆パンタローネ笑うため作られたアル。コレ十秒でわかた。ワン・ツー・スリー。前の三体、皆壊れた。ワンとツー、芸つまらんと口滑らせて壊された。恐怖。コレ二十秒でわかた。自動人形の悪魔、ナルミだけ違た。いやナルミ全然マシ。怒るマシ、暴れるマシ。けどナルミ泣かない、いじけて隅こで両膝抱えドナドナ歌わんアル。パンタローネいじける。芸ウケないとドナドナドナドナ言うアル。今のは牛追う掛け声アルからJASRACきと怒らん。客笑うまでドナドナドナドナ続けるアル。寒いアル、重いアル。堪えきれずチャイナ・スリー自爆したアル。コレ三十秒でわかた。コレまた恐怖。だから頑張た。ワタシ一生懸命頑張て、なんとか必死でどうにか無理にでもパンタローネ笑お努力したアル。起きて鏡で作り笑い、笑顔練習したアル。寝る前必ず星に祈た。明日こそ嘘でも笑えますよに祈たアル。毎日毎日毎日毎日必死に努力、正義友情努力努力努力アル。でも努力ムダ、パンタローネの芸全然笑えんアた。嘘でも笑えんアル。パンタローネの努力、ワタシの努力、全部ムダ。世の中やぱりムダな努力アル思た。パンタローネ、全然つまらん。でも懲りない。当人自覚ない。だから努力続ける。全部ムダな努力。でも当人やぱり自覚ない。悪循環。泥沼沈む思いアル、もがくと沈む。もがくほど沈むネー。パンタローネ芸どんどんどんどんつまらなくなる、ますます苦痛アル。皆逃げる。ワタシも逃げる、でも捕まる。パンタローネ何故かワタシ追うネ。ワタシ愛されてるアルか、光栄アル、謹んで辞退したいアル。きと、ワタシ優しいから無理笑う。必死に笑う。だから愛される、パンタローネだから喜んで、ますます芸見せたがる。全然ダメ。見るの苦痛。だから逃げる。でも捕まる。また悪循環。ずと同じ繰り返し。でもワタシ頑張たアル。一生懸命頑張ればきとシアワセなれる信じて闘た、しろがね、いぱい殺した。でも努力ムダ。全然かけらも全くシアワセ来ない。来ないウチついにワタシ倒された。アイヤー! 思い返しても全然いいことなかたアル。やと気づいた。このまま壊れるダメ思たネ、ワタシあまり惨めに思えたアル。だから逃げた。このまま壊れる不シアワセ思たアル。最期の最期にシアワセ感じたい思た、思たらドリル出てた、足からドリル、最後の力で穴掘て逃げた。地面どんどん掘たアル、カラダボロボロアル、行き先めちゃくちゃアル。でもまだマシ、寒い思て壊れるよりよほどマシあたヨ。そしたら地上出た、どこか砂浜、きと南の島。波の音静かアル、空綺麗、海綺麗、青い珊瑚礁アルね。あーワタシの恋は言いかけてJASRAC怒るからヨロシない思た。青い珊瑚礁も映画なら怒られない、コレたいへん不思議思た。また脱線したアル。青い珊瑚礁綺麗思た。心洗われる思たネ。ここで壊れる、これたいへん幸せアル、海綺麗、空綺麗、何よりパンタローネいない。もう芸見ないでヨロシ、コレ思うとやとシアワセなれた思たヨ。やたー、ハピーエンドアルね! 青い珊瑚礁でめでたく壊れてくアル、からくり出番もうないけど平気アル思た。読者作者皆忘れても平気アル。ちょとだけ寂し思たけど、でもシアワセなれたからヨロシね。でもやぱり寂し思たアル。ひとりじゃちょと寂しネ。青い珊瑚礁だから松田聖子はいいけどブルックシールズ欲しくなたアル。ブルックの膝枕の上で壊れたい、ちょと思たアル。高望みわかてる、でもちょと寂し思たアル。そしたら足にボロ布絡んでたアル。汚い布思た。きと、どこかで引かかたネ。仕方ないからこれで我慢思た。ボロに目鼻描く、手足つける、そしてブルック名付けてシアワセに壊れよ思てボロ引き寄せた。そしたらボロ、もう目鼻アた。手足アた。描く手間省けた思てボロよく見たアル。でも気づいた、ボロ、ボロ違うアた。ボロに似てるけどパンタローネ、足にしがみついて逃げてたアル。どうりでヘンなブルック思た。でもブルック違う、パンタローネだたアル。パンタローネ、ワタシ見て言たヨ。「チャイナ・ホー……わしを、ボロ布と思うたな」キリキリキリキリ、歯車乾いて声出ない。そしたらパンタローネ、また続けたアル。

 

「……ま、しかたない。

ナルミの暴力(ボーロく)やられてしまったからの」

 

歯車トンだ。体液沸騰したアル。カラダの部品がバラバラなていたアル。でもそれよりずと寒かたネ。南の島、そのまま南下して南極になたアル。まるでひょうたん島思た。ドンガバチョ誰アルか、皆人形アル、でもダンディさんヴィルマさんアルから、だたらヴィルマさん人形だたかと思たネ。ぼくらを乗せてどく行くか思いかけてまたJASRAC怒るからと思いとどまたアル。意識薄れゆくなか最期まで気配りしてワタシ偉い思た。自分で自分誉めてやりたい思たけど、セリフはパクても怒られない、やぱり不思議思うアル。そう思てたらパンタローネまだ言たアル。

 

「なぁに、ボロ布とてリサイクルして、奇跡の逆転勝利をはかってやろうぞ。

メーク・ミサイクルじゃ!

 

「…………………………いやな、今のはリサイクルとミラクルをかけてじゃな。

「…………………………………………………………おもしろくなかったかの?」

 

もう悔いないアル、このまま壊れる大変シアワセ思た。聞きたくない、もう聞きたくない。もう二度とこのダジャレを聞かずにすむかと思うとたいへんシアワセあた。短い人形生あたけど、やと解放される、これたいへんヨロシ初めて思えたヨ。悟りの心境、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏あァありがたいありがたい思た。文学引用しても怒られないやぱり不思議アル。おと脱線、最期の最期まで脱線するネ。せめてこれからは、あたたかい人形の天国で今度こそシアワセに暮らそう思たアル。でもまたすぐパンタローネ来る、ナルミに壊されてパンタローネすぐ来る思たら気が重くなた。だからそのとき耳塞いで他人の違た他人形のフリしようかと思てたら段々気が遠くなてたアルね。これでチャイナ・ホーのお話もおしまいアル。長々読んでくれた皆に心から感謝してせめて最期にお別れするヨロシね。それじゃ皆さん、これでチャイナら♪……あ、伝染てしまたアル。

(fin)

(H12.12.27_R.YASUOKA)

(special thanks,

(based on COMIC,by Kazuhiro Fujita

(total graphic design by K)

おことわり

本作はフィクションです。登場するあるいは想起されるあらゆる人物・団体・事件その他はすべて実在のものとは無関係です。