起承転結オリジナルストーリー

閑古鳥のぼやき番外編

「マカロニグラタンレシピ」

 

 

 

まいど当店をご利用くださいまして、まことにありがとうございます。

本日は日頃のご愛顧に感謝して、当店お薦めの新メニュー、マカロニグラタンの作り方を披露したいと思いますので、よろしくおつきあいください」

「そういえば・・・ウチの店ってこういう軽食はあまり扱ってないっスね。ケーキばかりで」

「ああ・・・まあ、ウチは基本的に『茶房』だからな」

「てゆーか、素直に認めちゃったらどうスか? 味オンチで大雑把、料理に向かないヒトだってこと」

「ば、バカ言え・・・これでも料理の一つや二つくらい・・・」

「それじゃま、お手並み拝見と行きましょうか?」

「こら、おまえも手伝うんだよ

「あ・・・そうでしたね。それじゃまずは、材料からっスね」

 

材料(4人分)

マカロニ・・・・・・200グラム

玉ねぎ・・・・・・1/2個

鶏肉・・・・・・200グラム

粉チーズ・・・・・・大さじ4杯

食卓塩・・・・・小さじ2杯

コショウ・・・・・・少々

バター・・・・・・大さじ1杯

(ホワイトソース・・・2カップ分)

牛乳・・・・・・2カップ

小麦粉・・・・・・大さじ4杯

バター・・・・・・大さじ3杯

食卓塩・・・・・・小さじ1/3杯

クラシックCD・・・・・・1枚

 

「なんか、料理番組みたいッスね・・・グラハム=カー、大好きだったんスよ!」

「おい・・・誰も知らないって。せめてマチャアキにしとけ」

「はははっ・・・って、何です! このクラシックCDってのは!?」

「ああ、これか・・・これはな、料理するときのBGMだ」

「び・・・何でそんなもん?」

「気分の問題だよ。それに・・・下ごしらえの時に材料に聴かせておくと味が微妙に違ってくるもんでな。・・・ちなみにお薦めは、カラヤン&ベルリンフィルハーモニーのホルスト『惑星』かな?」

「・・・びっくりしましたよ、CDまで喰っちゃうんじゃないかって・・・やりかねないからな・・・この人」

「なんか言ったか?」

「いいえ、何も!」

「・・・ま、グラタンは結構自由度の高い料理だから・・・材料にもバリエーションがあるんだがな。その辺はおいおい説明するってコトで、始めようか」

「はーい」

 

 

マカロニをゆでる

なるべく大きくて底塩を入れた湯沸かす。
1リットルに対して小さじ1杯割合目安。

 

「まずは下ごしらえだ。ゆであがるのにいちばん時間のかかるマカロニからやろうか」

「鍋にお湯を沸かして、マカロニをゆでるんスね。・・・ところで」

「ん? 何だ?」

『湯を沸かす』って言い方、変じゃないスか? 沸かすのは水、でしょう?」

「・・・え?」

「いえ、ですからね・・・『水』を沸かして『湯』を作るんスよ、この場合あくまで沸かすのは『水』だから『湯』を沸かすって言い方はどう考えたって変なんスよ、そう思いません?」

「ん・・・慣用句だからな、あれは。(『水』を)沸かすと『湯』になるって意味で、『湯沸かし』になったんじゃないか?」

な〜んか納得いかないっスね・・・沸かして『湯』になるってのは。主語は『水』ですよ『水』! この場合、述語『沸かす』の主語はあくまで『水』っスから・・・」

「だからな、その主語よりも『沸か』される対象となる『湯』が重視されるから・・・ああ、自分で言っててワケわかんなくなってきた」

「ですからね、ここでは『水』が『湯』になって・・・わっ! 鍋がふいてます!

「どわっ・・・ほら見ろ、ややこしい議論してる間に湯が沸いちまったじゃないか」

「わかってないヒトだなぁ、ですから『湯が沸いた』っていうのはおかしいんスよ・・・今までさんざん言ってたでしょ?」

「・・・『湯』がどんなものだか、頭から体験してみるか? え?」

「ちょ・・・! 落ち着いてくださいって、自分が沸騰してるっスよ」

 

 

・沸騰したらマカロニ入れ、
きこぼれないよう火加減を調節しながらかき混ぜる。

 

さあさあ! マカロニをかきまぜるっスかねぇ」

「混ぜるといっても、マカロニは比較的きこぼれたりくっついたりしにくいからな・・・それほどつきっきりで見ている必要もないんだよな」

「そうっスね。うどんや蕎麦に比べると楽勝っスよ!」

「問題はゆであげるタイミングだな、それは ・・・

 

 

・袋いてあるゆで時間よりめにザルあけ、
オリーブ油
バターまぶしておく。

 

「・・・ちっ、言われてしまったか」

「なーにを張りあってるんスか・・・とりあえず、少し硬めの状態でゆであげるようにするんスね」

「ああ、後でグラタンに入れる分を計算しないとな」

「じゃ、味見しながらタイミングを見計らうとしましょうか・・・うんうん、もうちょっとかな?」

「味見って・・・時間はかっとけば充分だぞ。厳密にしなくても」

「・・・うんうん・・・」

「標準10分なら7〜8分くらいでな」

「・・・うんうん・・・」

「なんだったら、標準時間でゆでたって構わないし」

「・・・うんうん・・・」

「・・・おい、ヒトの話を聞いて・・・あっ、コラ! いつまで食ってるんだよ」

「えっ・・・あ、つい・・・」

「ば、バカ! あ〜〜〜、半分以上食っちまって・・・」

「すいません、その・・・うまいんですよ、ゆでたてのパスタって! マカロニの穴にしみた塩水が、噛むときにチュッ!って口の中に広がりましてね・・・」

「うるさい!・・・もういいから、ザルにあけて水気をよく切っとけよ」

「はいはい」

「油をまぶすのを忘れんなよ」

「はいはいはい」

「ハイは一回でいい!」

「は〜い・・・なんだよ、偉そうに

「なんか言ったか?」

「いえ、何でも!」

 

 

 

ホワイトソースを作る

・厚めの鍋バター溶かし、
小麦粉
入れ、
げつかせないように弱火炒める。

 

「パスタが茹で上がったところで、グラタンの命、ホワイトソースにかかろう」

わぁぁぁぁーおぅ! 本格的っスねマスター!」

「・・・なんか、別の作品のカラーが混ざってないか?」

「き、気のせいっスよ。ほらほら、小麦粉混ぜちゃいましょうよ」

 

・・・今にして思えば、これがすべての悲劇の始まりだったんスね・・・

 

「な・・・何だ、いまのナレーションは!?」

「えっ? 何か聞こえましたか、オレにはさっぱり・・・空耳じゃないスか? なんか、この頃疲れてるみたいですし・・・」

「あのなあ・・・まあいい、先へ進めるぞ」

 

 

 

・鍋からおろし、
牛乳の半分
少しずつ入れながらかき混ぜ、
バター
小麦粉溶かす。

「パパパァ〜、パパパパパパァ〜〜」

「失礼っスね!・・・誰がパーですって?

「バカ、違うよ! ほら『惑星』だよ・・・第四楽章『木星』、サビを演奏してるだろ?」

「あっ・・・そういえば、CDかけてたんスね。うん・・・言われてみると、料理する気分も違ってくるもんスね」

「・・・だろ! 気分も高揚するし、料理の味も変わって来るってもんだよ」

「へえ・・・なるほど、聴いてるとマジでノってくるっスね! さて、牛乳をと・・・パパパァ〜、パパパと・・・でも、唄っちゃって大丈夫なんスか? JASRACに怒られないっスかね」

「う〜ん・・・大丈夫じゃないか? クラシックだし」

「そうスか、じゃあ安心して口ずさめるっスね! パパパァ〜、パパパパッパカパァ〜〜

パァ〜〜〜〜〜〜、
パァ〜ァ〜ラ〜パと! おっと、小麦粉溶かしてくれよ」

 

 

 

・溶ざったら再び鍋弱火にかけ、
残り牛乳加えて
トロリ
するまで煮詰めていく。

「パパァ〜、パパパパパパァ〜〜

パパパァ〜、パパッパカパァ〜〜

「パッパカパッカパカパァ〜

パパパァ〜・・・・・・・・・・・・・・っておい、

鍋はどうした?

 

「えっ、鍋? このとおり火にかけてますよ、ほら・・・

・・・やばっ、牛乳が減ってきたっスよ!」

煮詰まりすぎだっ! ほら、すぐに牛乳を足さないと・・・」

「はい・・・って、だめっス! 入れるそばからドンドン蒸発してきます!」

火だっ、火を消せッ! 今すぐ!

あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うっ。

もう、手遅れっす。なんか・・・ガチガチに固まっちまったんスけど。焦げてるし」

「ああ・・・しまった・・・」

「ううっ、ホワイトソース・・・全滅っスね」

「・・・そーすか・・・」

「こんな時に、どのツラ下げてそんなオヤジギャグがとばせるンスか・・・」

「パッパカやってる間に・・・ソースがパァ〜になっちゃった。ナンチャッテ

「・・・・・・その前に、オレたちがパーだと思われますよ。で、どうするんスか? いったい」

「ふふふふふ、心配ない! こんなこともあろうかと・・・ほら!」

「って・・・クリームシチューの素スか? まさか、これを替わりに?」

「そうだよ」

「ちょ・・・ちょっと待ってくださいよ! こんなもんグラタンに・・・」

「背に腹はかえられん!・・・まあ、見た目も味も似たようなものだし・・・」

「んな、無茶苦茶な・・・」

いいか、男ってのはな・・・たとえどんなに無茶だとわかっていても、己の決断を信じてやらなければならない時ってものがあるんだよ!」

「グラタン作りながら男を語んないでくださいよ・・・」

 

グラタンを作る

・千切りにした玉ねぎ一口大切った鶏肉を、
バター
を溶かしたフライパン炒め、塩コショウする。

 

「さあ・・・ホワイトソースもできたし、いよいよグラタンづくりにとりかかろうか」

「・・・はあい」

「声が小さいぞ」

「はあい! はいはい、んじゃ・・・鶏肉と玉ねぎを炒めましょうかねっと」

「うん。まあ、具はお好みだな。エビを使えばシーフードになるし、茹でたジャガイモでポテトグラタンとか・・・ご飯を入れてラザァ〜ニアにしてしまうこともできるからな」

「ラザーニア? ラザニアっスか?」

「ノンノンノンノンノン、ラを巻き舌にしてラザァ〜〜〜ニア!

「・・・・・・なんか、いつもとキャラ違ってないっスか? 酔ってません?」

「・・・・・・・・・ま、一周年だから・・・・・・・・・」

「まったく・・・あれ? あの、いいスか?」

「ん?」

「それが・・・塩が、足らないんスが・・・」

「足りないって・・・補充すればいいだろうが」

「いえ・・・使い切っちゃったんです」

「・・・なんだって? だってさっき、分量どおりにあるのを確かめて・・・」

「それ!・・・それなんスがね。ほら、マカロニゆでるときの塩を、計算に入れてなかったんスよ・・・どうして、予定以外の所で使っちゃうんですか? まったく困ったもんだ・・・やれやれ

「何だよ、その態度は。店に少しくらい残ってるだろうが・・・探してみろよ」

「いいえ・・・残念ながら・・・」

「全然ないのか?」

「全然ありません!」

「くぅ、困ったな・・・仕方がない・・・・・・おい」

「何です?」

奥の部屋のロッカーの中に、黒の背広がある」

「・・・は?」

「ちょっと行って、上着の内ポケットを探ってくれないか」

「は、はい・・・いいスけど・・・何でいきなり・・・」

「・・・・・・清めの塩が、何袋か入ってるはずだ」

「き、きよめ・・・げぇーっ!! どこでそんなもんを・・・!」

「清めの塩っていったら、葬式でもらってきたに決まってる。・・・ここ何年か使わずにとっといたら、いつの間にか貯まっちまってな」

「貯まったって・・・使ってくださいよ! そんなもんを、よりによって・・・」

「塩にかわりはないだろ! ほら、行って来い」

「はい、はい! わかりましたよ・・・」

「そうだ、余ったら客席の小瓶に移しといてくれよ」

「それだけはヤです、絶対!!」

 

 

 

・材料通ったら、
マカロニ
ホワイトソースあわせる。

「とりあえず・・・味も整ったようだし、材料をひとつにまとめるか。・・・グラタンの完成はもうすぐだぞ」

「あの・・・ねぇ?」

「なんだ?」

「これ、焼かずに鍋にかけたら、クリームシチューの出来上がりっスよね?」

「グラタンだよ」

「もう・・・クリームシチューに変えちゃいましょうよ。このあと続けても、きっとロクな結果に終わらないと思いますし・・・シチューならあとは、あっためたらオシマイですから」

「グラタンだよ」

「大丈夫ですって! 今から文章書き換えて、タイトルも変えちゃえば誰にもバレませんって! あとはオレたちが口裏合わせとけばカンッペキっスよ、ね!」

「グラタンだよ」

「う・・・はい。はいはい、わかりましたよ・・・でも、知りませんよ? あとで後悔したって・・・ホントに強情なんだから・・・」

 

 

 

・グラタン皿バター薄く塗り、材料入れる。

「さあて、いよいよ盛りつけるとしようか。あとはオーブンで焼くだけだ、と・・・で、グラタン皿は?」

「皿っスか?・・・ないスよ、グラタン皿」

おいおい、準備してないのかよ。じゃあ、早く・・・」

「それがね・・・見当たらないんスよ、どこにも」

「・・・なんだって!? おいっ、それじゃグラタンにならないじゃないかよ・・・もっとしっかり探してみろ!

「ええ・・・わかりました。じゃ、もうちょっとだけ探してみますけど。でも・・・たぶん、見つからないと思いますよ。きっと」

「きっとって、ちゃんと探せば・・・っておい、なんでそんなに言い切れるんだよ?」

「だって・・・オレが借りてますから。家に」

「なんだと・・・馬鹿野郎ッ! どうしてそんなマネを・・・?」

「ええ・・・実は、こないだ友達(野郎ですけど、ぐすん)が泊まりに来ましてね。皿が足んなくなっちゃったんスよ。それで手近にあったのを持って帰って・・・わぁっ、ごめんなさい! 怒んないでくださいよ!」

「これが怒らずにいられるか! てめぇっ、今日という今日堪忍袋・・・

「わかった、わかりましたから!・・・とりあえず、フライパンは置いてください。落ち着いて、いっしょに打開策を練りましょうよ・・・ね?」

「・・・」

「ほらっ、ちょっと深めで手頃なサイズの皿があればいいんスよね? 探しましょ」

「・・・」

あららら・・・ないなァ、見あたりませんね。いくら小さな店とはいえ、皿のストックくらいちゃんと持っとかないと・・・スね」

「・・・しかたがない、最後の手段だ

「あっ、なんです? それ」

「このアルミホイルを折りたたんで・・・ほら、グラタン皿のできあがり!」

「は? あ・あ・あるみほいるぅ?」

「どうだ、サイズもカタチも自由自在! 洗う手間も省けるし・・・ん、どうした?」

「・・・・・・び、貧乏くせえ」

「なんか言ったか?・・・何だったら、今から家に取りに行ってもらおうか?」

「いいえ!・・・いやぁ、ナイスアイディア、さすがっスねぇ!・・・とほほ」

 

 

 

・粉チーズふりかけ、
200度
オーブン15分程度焼く。
表面
こんがり焦げるくらいが適当。

「・・・まあともかく、あとは焼くだけっスね。どうにか・・・」

「その前に、たっぷりと粉チーズをふりかけておけよ。・・・粉チーズのかわりに市販のと○けるチーズなんて使ってもいいけど、それはお好みだな」

「はーい! オレ、そっちのがいいです・・・ちょっと買ってきましょうか?

「間に合わんだろが! いいからほら、オーブン皿に乗っけてオーブンに入れるんだぞ」

「はいはい・・・冗談ですってば」

「冗談? 冗談ってのはな、

『オーブンをオープンにしてオウブンの措置をとれ』・・・ナンチャッテ

「・・・ううっ、寒気が・・・」

「寒気・・・寒気がしてんの誰だ? SAMけぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・すいませんねェ、お客さん」

「・・・悪かったな、オヤジギャグで。ほら、オーブンに入れるんだぞ

「オーブンつったって、電子レンジに毛が生えたのじゃないスか・・・もっと大きな業務用、買いましょうよ!」

「いいんだよ、ウチの規模ならこれでちょうどだから」

「ふん、ケチ・・・ほら、ピ、ピ、ピでスイッチ・オン!

「バカッ・・・そのスイッチは、電子レン

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!! ひっ、火花が、火花がぁ・・・!!」

「早く! さっさと止め・・・どけぇっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくお待ちください

よいこの皆さんへ

電子レンジの中には、金属製のお皿・食器などを入れないようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・と、止まりましたね・・・・・・」

「あ・・・ホイルが、アルミホイルが・・・」

「・・・・・・すごかったスね、火花。その・・・綺麗で・・・・・・

「・・・よかった。レンジ、まだ、動いてる・・・」

「・・・・・・オーブン、でしたっけ? 今度は、間違えずに・・・」

「もういい・・・やる、どきな・・・」

 

 

 

・オーブンから出して出来上がり、
さあ召し上がれ。

「ま、まあ・・・どうにか、その・・・焼き上がったみたいだな」

「・・・ねえ、どうしても食べなきゃダメですか?

不満か? おいしそうじゃないか」

「ほ・・・本気でそう思ってるんスか?」

「何だ? 食べたくないようだな・・・あ、そういえば」

「そういえば・・・何スか?」

「実は・・・この店も火の車でな、ウェイトレスとアルバイトと二人も雇うにはちょっと苦しいんだよな・・・」

ぐっ、きたねえ・・・はいはい、食えばいいんでしょ!・・・それではバイト、罰ゲーム一気食い、いきまーす!」

「な、なんてコトを・・・ほら、黙って食え」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・なんだ、いけるじゃないか」

「マジですか!? どこが!・・・これだから、味オンチは・・・」

「味オンチだと、何を失敬な! これでも、甘いと辛いの区別くらいはつくんだぞ」

「あのですね・・・! だいたい・・・ホワイトソースに水気が多いから、ほとんど焦げ目がないじゃないスか! だから、シチューの素なんて使うなって言ったのに・・・」

「このくらい、研究すれば適度な水加減になる! だいたい・・・ホワイトソースを全滅させたのは、どこの誰だったっけ?」

ま、まあそれはそうと・・・マカロニの量も少ないし・・・」

量が少ないって?・・・誰だ? 半分以上食っちまったのは・・・」

「なんスか、その眼は・・・

おっ、オレのせいとでもいうんスか?

「お前のせいだろが!」

「あ、あははは・・・そうでしたっけ? ボクってうっかり屋さんだなあ・・・それはともかく、こんな出来損ないは試食やめて、とっとと処分しちゃいましょうよ。ねえ・・・」

「・・・確かそろそろ、ボーナスの季節だったよな?」

「わかった! わかったっスよもう!・・・要は、グラタンだと思って食うからまずくも感じるんスね。もっと何か別の料理だと思えば、それなりに味わって・・・うん! なかなかイケるなぁこの・・・マカロニの煮っ転がしはぁ!」

「・・・いちいち引っかかるヤツだな・・・」

「ま、まあそんな怖い顔しないでくださいよぉ・・・ふう、なんとか平らげたっス。ううっ・・・」

「・・・ほら、もう一皿な」

げげっ、マジっスか!

「四皿作ったんだよ、ノルマ二皿に決まってるだろ? ほら」

「・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

ああっ、井上喜久子だ!」

「なんだとっ、どこどこ? アイナァ〜〜〜〜!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おい、どこにもいないじゃ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・しまった、逃げられたか

 

「え、ええと・・・コホン。まあ、いろいろとありましたが、

当店自慢の新メニュー、マカロニグラタンの完成でございます。

「もし・・・もし当店にお立ち寄りの際には、ぜひ一度ご賞味くださいますよう、

「謹んでお願い申し上げます。どうぞよろしく」

 

「・・・絶対、やめた方がいいっスよ!」

 

(fin)

 

(H11.11.21_R.YASUOKA
((C)Logic Consuruction 1999)

 

おことわり:
本作はおそらくフィクションです。
登場する、あるいは想起されるいかなる人物・料理・調理法も
実在のものとはきっと無関係です。

また、文中レシピは西東社刊「初めての人によくわかる料理入門」より引用しました。