起承転結オリジナルストーリー
「猫パステル王様絵」

 

彼は、パステルという名の猫です。

絵を描くのが大好きです。

今日も絵を描こうと旅を続けています。

「さぁて、今日は何を描こうかニャ」

 

ある日、パステルは大きな国の都に着きました。

街の真ん中に大きな城のそびえたつ、とてもにぎやかな都でした。

「ふむふむ、とっても大きな街だニャ。
「これならきっと、いろんなスケッチができるに違いないニャ」

と、パステルは都の大通りを歩いておりました。

 

すると、にわかに人々がざわめきました。

「おや、どうかしたのかニャ」

と、パステルが訊ねようとしたとき、

道の彼方から、ものものしい行列がやってきたのです。

たいへんだ、王様が来た!

「逃げなくちゃ、首を刎ねられるぞぉ!」

皆は口々にそういうと、すぐさま自分の家へと逃げ出して、

たちまちあたりには誰もいなくなりました。

 

たった一匹残されたパステルが、わけがわからずきょとんとしましたが、

それでもスケッチブックを取りだして、

「やった! あれが王様の行列というものかニャ・・・初めて見たニャ。
これはぜひともスケッチしないとニャ」

と、さっそく行列の絵を描き始めました。

やかを着た女官たちや、

った護衛の兵士たちが、

つぎつぎ、つぎつぎと

パステルのスケッチブックに次々描かれていきました。

 

 

「そうニャ、王様の行列だったら王様を描かないとニャ。
「ええといったい、王様はどこかニャ?」

 

そう言って、パステル行列をよく探しますと

大きな馬車に乗っている、王冠をかぶった王様が見つかりました。

王様は、その行列の中でも一番偉そうで

一番ふとっちょで、一番ぶさいくで

一番意地悪そうな顔をしていたのです。

それを見て、パステルはたいそう喜びました。

これはすごいニャ、こんなにふとっちょで
「ぶさいくで、意地悪そうな王様なんて見たことないニャ。
「これはとっても個性的が描けそうだニャ」

 

それからパステルが、そのふとっちょでぶさいくで意地悪そうな

王様の絵を描こうと、スケッチブックをめくったときです。

パステルの声を聞きつけて、行列から

こわい顔をした、いかつい兵士がやってきました。

兵士はパステルの首根っこをつかんでぶら下げると、

こわい顔をいっそうこわくして、してこう言いました。

おい猫、よくも王様のことを
「ふとっちょで、ぶさいくで、意地悪そうだなんて悪口を言ったな。
お前のようなやつ今すぐ引っ捕らえ、
「ギロチンにかけて首を刎ねてやるぞ」

ちゅうぶらりんになってパステルは、兵士に尋ねました。

「え、王様の悪口うと、ギロチンにかけられちゃうのかニャ?
「う〜む、首を刎ねられたら絵が描けなくなってしまうニャ。困ったニャ

 

兵士は得意げに笑いました。

わははは。どうだ、困っただろう。
「おれたちはお前のように、王様のことを
「ふとっちょでぶさいくで意地悪そうだとか言う奴らを
「引っ捕らえてギロチンにかけて、
「他の連中への見せしめにするのが仕事よ。
「いっぱい捕まえるほど手柄になって、
王様にほめられて、勲章がもらえるんだぞ。
「さっそくお前もギロチンにかけて、おれ勲章にしてやるからな。
わはは。わははははははは

 

そうしていると、突然、行列が止まりました。

兵士が、あまり大きな声で笑うものですから、

馬車に乗った王様が、パステルたちに気がついたのです。

王様は、パステルを捕まえた兵士にこう言いました。

「おいおまえ、ご苦労である。
「予は、予の悪口を言うものをギロチンにかけるため、
こうして都を見回っておるのじゃ。
「そうして得意げにいるところを見ると、
「さては、予の悪口を言うやつがいたのだろうな」

兵士は敬礼して答えました。

「はい王様、たった今
「王様を偉そうふとっちょぶさいく意地悪そうだと言った
「けしからん猫めを
「このようにして捕らえたのでございます。
「手柄を立てたから、どうか是非とも勲章くださいませ。わはははは」

 

すると、王様は怒り出してこう言ったのです。

おまえ、よくも面と向かって予のことを
「ふとっちょで、ぶさいくで、いじわるそうだと言いおったな。
「それ皆の者、猫ともどもこの兵士の首を、ギロチンで刎ねてしまえ」

 

 王様、今のはけして私が言ったわけではありません。
「王様がふとっちょぶさいく意地悪そうだというのは
「全部この猫が言ったことでございますよ」

と、驚いて兵士が言い訳をしました。

ところが王様は、ますます怒ってしまって、

「おのれ、またしても抜かしおったな。
「まずはおまえから先に
ギロチン
してくれるぞ。
それ、この不届き者をひっ立てい」

そう言って、兵士を処刑場にと連れて行かせました。

泣きながら連行される兵士の姿が見えなくなったのち、

続いて、王様はパステルを捕まえました。

「こら猫、次はお前をギロチンに送ってやるから、覚悟しろよ」

 

 

今度はしっぽをつかまれて、

ぶらんと逆さ吊りになってしまったパステルでしたが、

それでもスケッチブックは放さずに、スケッチを続けながら言いました。

「う〜、ギロチンにかけられたくニャいけど、
せめてもうちょっとだけ待つニャ。
もう少しでこのスケッチが描き上がるところなんだニャ」

すると、王様は興味を持ったようで

「ほう、おまえは絵描きなのか」

そう尋ねて、パステルのスケッチブックをのぞき込みました。

「そうなんだニャ」

と、パステルが答えます。

彼の書いたスケッチを、行列の兵士や女官を描いたスケッチを見て王様は

その上手さに感心して、あごひげをなぜながらこう言ったのです。

「ふむう、これはなかなか見事な腕前じゃな。
「実はな。予はこれまで多くの絵描きに肖像画描かせてきたが、
「皆ヘタクソで、ちっともわしに似せようとしないから
かたっぱしからギロチン送ってやったのよ。
「どうじゃ猫、お前が絵描きなら予の肖像を描いてみぬか?
いやだと言ったら、すぐさまギロチンに送ってやるぞ」

それから王様は、胸をそらせて偉そうにポーズをとりました。

 

「うん、いいニャ。
「どっちみち、王様のふとっ
(と言いかけてパステルは気がついて)
「王様の個性的な絵は描きたかったし、
「ギロチンに送られるのもイヤだから描くことにするニャ」

と、パステルはさっそく王様の絵を描き始めました。

「よいか、かっこいいわしをかっこよく描くのだぞ。
「ちょっとでも似てなければ、すぐさまギロチンにかけてくれるからな」

と、王様はポーズをつけたまま言います。

またたくまに、パステルは王様の絵を描き上げました。

パステルの絵は本当にうまく、

写真うにそっくりな、

偉そうで、ふとっちょで、ぶさいくで、

意地の悪そうな王様の絵ができあがったのです。

「どうニャ、そっくりにできたかニャ」

パステルは、完成した絵を自慢げに披露しました。

 

ところが、

絵を一目見るなり、王様は顔を真っ赤にして怒りました。

「これ猫、わしはこんなにふとっちょで、ぶさいくで、
「意地悪そうな顔などしておらんぞ」

そう言う王様は、怒るとますますぶさいくで、意地悪そうな顔になりました。

「こんなうそっぱちな絵を描いた罰として、
予が直々にギロチンにかけてくれるわ」

そう言って、またしてもパステルのしっぽをつかんで、

ぐるぐるぐるぐる振り回しました。

「わっ、景色がぐるぐる回ってるニャ!
「わかったニャ。ギロチンにかけられたくはニャいから、
「それじゃ修整することにするニャ、ちょっと待つニャ」

そういってパステルは、王様の絵を描き直しはじめました。

パステルは、ギロチンがやっぱりイヤでしたし、

なにより、横から絵をのぞき込みながら王様が、

「おい、予の眉はもっと細くてりりしいぞ。
だって、そんなに分厚くないからな」

などと注文をつけるものですから、それにあわせて

かっこよく描くことになってしまったのです。

 

そうしてできあがった絵を見て王様は、

、あっぱれある。
「これほどうまい肖像画はみたことがない」

と、またまたひげをなでて感心しました。

パステルの描いた王様の絵は、

かっこよくて、かしこそうで、性格が良さそうな王様だったのです。

一目みるなり王様は、機嫌を直してにこやかになりました。

「こんなにかっこよくて、かしこそうで、性格が良さそうな姿は
「本当に予に生き写しじゃな。
「褒めてつかわすぞ猫、これからはおまえを王宮画家に任じよう。
そうだ、それとも勲章をつかわしてやろうか。ん?」

そうして、王様は喜びのあまり

またしてもパステルのしっぽをつかんでぐるぐる回したのです。

「わっ、またまた目が回るニャ!
「勲章も王宮画家もいいから、とにかく放してくれだニャ」

こうして、パステルは目が回ってふらふらしながら、

それでも、ギロチンにかけられることもなくなったのでした。

 

さて、さっそくお城に戻った王様は、

パステルの描いた絵を、何度も、何度もあくことなく眺め続けました。

「このそっくりな絵は、玉座後ろに飾ろう。
家来ども、予に生き写しのこの絵をみて
「予への尊敬の念をますます深めるがよいぞ」

そうして王様は、王様の絵を、自分が座る玉座の後ろに飾りました。

かっこよくて、かしこそうで、人柄の良さそうな王様の絵を見て

家来はみんな、うやうやしくお辞儀をするようになりました。

しめしめ、肖像画のおかげで
「かっこいい予のの威厳を、よりしらしめることができたわい」

と、王様は大喜びです。

 

ところが、ある日のことです。

王様は、みんなを集めてこう言いました。

「よし皆の者、今日は久しぶりに街に出掛けよう。
予の悪口を言う輩を引っ捕らえ、ギロチンにかけるのじゃ」

そうして、王様は先頭に立って行こうと玉座を降りました。

ところが、家来は誰一人としてついてきませんでした。

「おい、どうした。
「とっととついて参れと言うのがわからんのか」」

と、王様が振り返ってみて・・・そして、仰天しました。

家来たちはみんな、絵に描かれた王様にお辞儀をしたまんまで

王様のことなど、誰も気に留めようともしません。

誰にも相手にされなくて、たちまち王様は怒りました。

こらおまえら、いつまで絵ばかり見ておるかっ、
「予を無視する奴は、片端からギロチンだぞ」

 

ところが、王様の声に気がついた家来たちは、

王様を見るなり口々にこう言ったのです。

「なんだこいつは?」

「ここは部外者立入禁止だぞ」

思わぬ言葉に王様は驚きました。

「何を言うか、無礼者め! 予を、王様を見忘れたのか!」

ところが、家来は王様を王様と認めようとはしませんでした。

「ウソを言うな、王様はそんなにふとっちょじゃないし、ぶさいくでもないぞ」

「そうだそうだ、王様はおまえみたいに意地悪そうな顔なんてしてないぞ」

ずっと王様の絵を見続けたせいで、みんな、

玉座から離れてしまった王様が、王様に見えなくなってしまったのです。

「このニセモノめ、王様かたった罪でギロチンにかけてしまえ」

そう言うと、家来たちは王様を捕まえてしまったのです。

「待て、待ってくれ・・・ギロチンなんてやめてくれっ、助けてくれぇ!」

王様は怖くなって、手足をばたばたさせながら叫びました。

 

すると、家来の一人がみんなを止めて、

「待ちなさいみんな。いきなりギロチンにかけるなんて野蛮なこと、
「このかっこよくてかしこそうな偉い王様がお許しになるはずないぞ」

と言うと、それから誇らしげに王様の絵を指さしました。

「ああありがとう・・・そうだぞ、そんな残酷なことはしてはならんぞ」

そう王様が言いかけたとき、その家来はこう続けました。

「この絵のかっこよくて、かしこそうで、性格の良さそうな王様なら
「きちんと法廷裁判にかけてから
死刑になさるに違いない。
「我が国は
先進国だから、いきなりギロチンにかけたりしないで、
法治国家にふさわしく、
法秩序極刑に処すべきだぞ」

それを聞いて、家来たちはいっせいにうなずきました。

「それもそうですね。この絵の王様ならきっとそうお考えになるでしょうから」

「そうじゃな、死刑にする前にきちんと裁判すべきじゃからな」

「さすが、なんてすばらしい王様なのでしょうか」

「ちっとも素晴らしくない!」

王様がまた叫びました。

ですが、それに構わず家来たちは王様を地下牢へ連れて行き、

そのまま独房に閉じこめてしまいました。

「さあニセモノめ、
「明日になったら裁判して死刑にしてやるから
最後の夜として、心の準備をしておくことだな。
さあ、我々はこれから
「あのかっこよくてかしこそうな王様がきっとなさるような
「国民のための素晴らしい政治について相談しようじゃないか」

と、そのまま家来たちは去ってしまいました。

 

さて。

家来たちがみんな行ってしまって、

王様はがっかり肩を落としてしまいました。

ううう、このままじゃギロチンにかけられてしまう。
「誰かあるか、誰かっ、なんとかしてくれぃ!」

王様は、助けを求めて何度も叫びました。

ですが、地下牢には誰もあらわれませんでした。

 

それからどれだけの時がたったのでしょうか。

叫び疲れた王様がぐったりしていたとき、

廊下の向こうから足音がしたかと思うと、

スケッチブックを抱えて、パステルがやってきたのです。

「ああ、よかった、間にあったニャ」

彼はそう言って、王様の牢に近づきました。

足音を聞きつけた王様は、独房の鉄格子にしがみつきました。

おお猫よ、予を助けに来てくれたのか!」

すると、パステルは言いました。

「ううん。違うんだニャ。
明日、
王様
さんがギロチンで首を刎ねられるというから、
「ぜひぜひ、その瞬間を描こうと思ったニャ。
「でも一瞬しか見られないから、
「顔や頭の様子だけを、今夜のうちにデッサンをしときたかったんだニャ」

そして、鉄格子の向こう側で

パステルはスケッチブックをひろげました。

「う〜、ここじゃ暗くて絵が描きづらいニャ。
ねえ王様さん、もっと近くに来てくれないかニャ?
明日首を刎ねられた瞬間のきちん描けるよう
「王様さんにも協力してもらいたいんだニャ」

 

「そ、そんな酷いことを言わんで、早く予をここから出してくれ!」

王様はパステルに頼みました。

「え〜、でも出してしまったら
「ギロチンの絵が描けニャくなってしまうじゃニャいの」

パステルは、そう答えるとスケッチを始めました。

「もう少し明るいほうがいいニャ」

と、廊下のたいまつを持ってきて、あたりが明るくなりました。

「よし、これで描きやすくなったニャ」

パステルはご機嫌です。

 

「お願いだ、頼む、助けてくれ!」

そんなパステルに王様は哀願しました。

「なあ頼む、助けてくれたら勲章を山ほどやるぞ。
「いや、いっそおまえを大臣にしよう。
「領地の半分をくれてやってもいい。だから!」

「う〜ん。
それもいいかもしれニャいけど」

と、パステルは答えました。

「芸術家の絵への情熱は、何物にもかえがたいんだニャ。
「だからもう、あきらめてデッサンのモデルになるのがいいんだニャ」

「そんなこと言わんでくれ!」

そう、王様は食い下がりました。

「これからは心を入れ替える。入れ替えるから、
もう、むやみに人をギロチンにかけないから、
どうかけてくれ。
「助けてくれないとギロチンだぞ」

そう言いかけてから気がついて、慌てて王様は訂正しました。

「いや、ギロチンにはかけないから、
「だから、だから頼む、予は、予はまだ死にたくない!」

ですが、王様の必死のお願いも、

スケッチに集中しはじめたパステルの耳には、もう入りません。

「おい猫、いや猫様、予を助けてくれっ、
予は、予は、よよよよよ〜〜」

ついに、王様はおいおい泣き出してしまいました。

 

スケッチの手を止めて、パステルは王様に言いました。

「う〜ん、ダメだニャ。もっと
への妄執あふれる苦悶形相を浮かべて欲しいんだニャ」

ですが、王様は、ただただ泣くばかりです。

涙があふれてしまったせいで

王様の顔はくしゃくしゃになってしまいました。

「ああ、これは困ったニャ。
こんな顔じゃいい絵が描けないニャ」

それからパステルは、しっぽを揺らして考え込みました。

「だいいち、こんなに偉そうで、ふとっちょで、ぶさいくで
「意地悪そうな顔じゃ、たとえギロチンにかけられたって
さぶるようニャ芸術なるとも思えニャいしな。う〜ん・・・

「そうニャ! いいこと考えたニャ。
「もう少し見栄えがするよう、この顔を描き直すことにするニャ」

そう言って、パステルは魔法の色鉛筆を取り出しました。

 

 

 

 

 

 

翌朝です。

「ああ、今日は絶好のギロチン・・・いや裁判日和だな」

と、家来たちが地下牢に集まってきました。

「さあ出てこいニセモノめ。
「これから裁判にかけて、ギロチンにかけてやるぞ」

そう言って牢をのぞいてから、

家来たちは仰天してしまいました。

中にいたのは、

パステルによってあの肖像画と同じに描き直された、

かっこよくて、かしこくて、性格の良さそうな王様だったからです。

ああっ、なんてことだ。
「あのふとっちょで、ぶさいくで、意地悪そうなニセモノのかわりに
「こんなにかっこよくて、かしこそうで、人柄の良さそうな本物の王様が
「閉じこめられてしまっているではないか。
申し訳ございません王様、どうかお許しになってください」

そうして家来たちは、王様を牢から釈放したのでした。

 

こうして、どうにか地下牢から出た王様は、

「おまえたち、よくも予をギロチンにかけようとしたな。
「即刻、今すぐ
一人残らず死刑にしてやる。
おまえら自身ギロチンわせてやるから、覚悟しろよ」

と、本当は言いたかったのですが、

どうやらパステルに性格まで描き直されてしまったようで、

そのかわりに王様は、にこやかに微笑みながらこう言いました。

「いや、お前たちが悪いわけではない。
「むしろ予の方こそ、お前たちを苦しめてしまったな。
どうか許してくれ。これからは心を入れ替えて
「みんなが幸せになれる政治をしていくことにしよう」

そういって王様はみんなを許すと、それからパレードにでかけました。

今度は、悪口を言う国民をギロチンにかけるためではなく、

いい政治をするために、街の人々の様子を見に行くためです。

 

そして。

王様がくりだして、街は大にぎわいになりました。

王様がまったくかっこよく、かしこそうで、人柄も良さそうになったので、

それから行列から、今まで貯めた金貨をまいたので、

人々もいっぱい集まって、王様にむかってバンザイと叫んでいます。

家の屋根に座ってパステルは、その様子を見おろしておりました。

う〜ん、ギロチンが見れニャくてちょっと残念だけど、
「これはこれでいい絵が描けそうだニャ。うれしいニャ♪」

それから彼は、スケッチブックを開いて、

みんなの絵を描き始めたのでした。

 

彼は、パステルという名の猫です。

絵を描くのが大好きです。

今日も絵を描こうと旅を続けています。

「さぁて、今日は何を描こうかニャ」

もしかしたら、

君の街にも来るかもしれませんね。

 

 

だけど。

だけど・・・ね。

それから王様は、立派な政治をして

長く長く家来や国民に愛され続けたのですが

でも、ね。

ときどき、ほんとにときどきですが

パステルの描いた王様の絵を見て

昔の、自分の姿を

ふとっちょでぶさいくで意地悪そうだった

昔の自分の姿を

ほんのちょっと懐かしく思ったり、

もっとほんのちょっぴりだけですが

さみしい、悲しい気分になったりすることがあったそうです。

せっかくかっこよくなれたのに、へんですね。

 

おしまい

(H13.1.30_R.YASUOKA)

 

おことわり:
本作はフィクションです。
登場するあるいは想起される人物・団体・事件・猫・王様・ギロチンその他はすべて実在のものとは無関係です。