新選組血風録オリジナルストーリー

お水取り(その3)〜『沖田総司の恋』より〜

 

 

土方歳三(新選組副長)

 

沖田総司(新選組副長助勤・一番隊組長)

お悠(医師半井なからい玄節の娘)

 

斎藤一(新選組副長助勤・三番隊組長)

井上源三郎(新選組副長助勤・六番隊組長)

原田左之助(新選組副長助勤・十番隊組長)

 

佐吉(京都所司代の目明かし)

御用盗浪士たち

商家櫛屋の番頭・使用人

半井家の老女

茶屋の下女

番太郎※番所の雑用係

新選組隊士たち

 

半井玄節(町医師)

 

近藤勇(新選組局長)

 

 

玄節宅・中庭

(玄関前。半井家の老女 、掃き掃除をしている。

(羽織姿の近藤、門をくぐり玄関先に姿を現す)

 

近藤「(老女に)御免」

老女「(近藤に気づき礼)おこしやす、患者はんどすか?」

近藤「いや……ご主人にお取り次ぎ願おう。拙者、新選組局長近藤勇だ」

老女「しんせんぐみ……ひえっ、壬生浪(みぶろ)……!(あわててよろめく)」

近藤「おっ、大丈夫か」

 

(近藤腕を伸ばして、よろけた老女を支える。

(お悠、玄関から顔を見せる)

 

お悠「(老女に)どうしたのですか」

老女「ああっ、お嬢様! 壬生ろ……いえ、新選組が」

近藤「(お悠に礼) これは失礼いたした。新選組の近藤と申す。玄節先生にお目に掛かりたい」

お悠「父に……? どのようなご用でしょうか」

近藤「それが……(ふと気がつき)もしやそこもと、お悠殿で?」

お悠「(肯く)……」

近藤「(腕を組み)では、いささか申し上げにくいな……」

お悠「……(不審げに)……」

近藤「とにかくっ、(と額を拭い)
 そこもとにとっても悪い話ではないことは確かだ。
 どうかお目通りを」

お悠「……とにかくお上がりください。ただいま父に取り次ぎますので」

 

(お悠、玄関奥に消える。

(近藤、それを追うように玄関に行く。

(残される老女)

 

老女「あれが壬生浪の近藤どすか。
もっと乱暴な荒武者や思てたなぁ……」

 

同・客間

(近藤、上座を固辞して玄節に対座す。

(近藤が話すの聞きながら玄節、茶に手をのばす)

 

玄節「……すると沖山様……いや、あの方は新選組の……」

近藤「知らなかったのか。新選組副長助勤、沖田総司だ」

玄節「そうでございましたか……」

近藤「名を隠した非礼はこの近藤が替わって謝る。このとおりだ」

玄節「(慌てて)どうか、お手をお上げください。近藤様」

近藤「……その上であらためて頼む。
 こちらのお嬢様を沖田の嫁としてもらい受けたい」

玄節「なんと、娘を……沖田様に、と?」

近藤「承知であろうが、
 新選組はかつての浪士隊に非ずして、既に会津候御預の身分。
 いずれ幕臣に取り立てという話もある。
 けして身分として釣り合わぬ事はありますまい……いや、
 貴殿は西本願寺門跡ゆえ、
 新選組をよく思われていないことと存ずるが……」

玄節「……」

近藤「だから、この場は新選組局長としてではなく、
沖田総司の父として申し上げたい。
 総司がどういう男か、きっと貴殿もご承知のことと存ずる。
 娘御を嫁がすに不足はないと思われるが」

玄節「……」

近藤「いかがであろう、玄節殿」

玄節「新選組局長たる近藤様が、かようにまで仰せになってくださいますこと、
たいへんありがたく存じます

近藤「おお、では

玄節「ですがその話……

お断り申し上げなければなりませぬ」

近藤「!」

玄節「沖山様……いや、沖田様でしたな……は
 まっすぐで、子供そのまま大人になったような人だ。
 あなたの仰せよう、ごもっともと承知してます」

近藤「……」

玄節「ですが私は、娘は侍にではなく……
 医者に嫁がせたいものと考えてございます」

近藤「なんと……武士の嫁にはやれぬ、と仰せですか……」

玄節「いえ……せめて、あの方が所司代なり他藩のお方であれば……」

近藤「つまり、我らが新選組であるからいかんと申すか」

玄節「お間違えなきように願います
 私は確かに西本願寺の門跡ですが、
 長州だの幕府だの、そのように考えたことはございません」

近藤「……?」

玄節「近藤様、あなた方新選組は、士道を何より尊ぶと伺っております」

近藤「いかにも」

玄節「士道、つまり侍の道は……人を殺す道です。
相手を殺し、時には己自身をも殺す」

 

(間)

 

玄節「そして私たち医者は人を生かす道です。
 人の命こそ何よりも尊いと考えるのが我々道です。
 いや……どちらが正しいとかではなくどっちも正しい。

しかし私どもは歩くべき道が異なるのです」

近藤「しかし、いずれも世のためであることに変わりはないのではないでしょうか」

玄節「進む向きが同じであっても、けして交わらぬ道です。
 ですから私は娘は、同じ道を行く後進に嫁りたいと考えているのでございます」

近藤「ぐ……」

玄節「失礼なことを申し上げました。どうかご容赦を」

近藤「いや……貴殿の仰せのとおりだろう。

我ら士道は、あなた方とは交わりはしないかもしれない」

玄節「(呟くように)……娘も、わかってくれるはずです……」

 

(間)

 

近藤「では、教えてくださらぬか」

玄節「はい」

近藤「総司は……沖田は何か、悪い病ではないのか」

玄節「……沖田様は、どのように仰せでおられますかな」

近藤「いや、何も」

玄節「……ならば、私から申し上げることはございません」

近藤「なに……それはどういうことだ」

玄節「どうかそれは、ご本人様からお聞きくださいませ」

近藤「その本人がも云わぬから訊いておるのだ!」

玄節「……近藤様、
あなたはきっと沖田様のことを、
まるで弟か息子のように思っておられるでしょうな」

近藤「ああ、そうだ」

玄節「あなた様がそうであるように、
 沖田様もまた、
 あなたを
  父か兄のように慕っておられることと存じます」

近藤「……」

玄節「あの方が何も申されないのはきっと……
あの方は、たとえ明日まで保たぬ命であったとしても、
あなたと共にあり、あなたと共に闘い続けること、
あなたと共に武士の道を歩むことを望んでおられるからでしょう」

近藤「……」

玄節「医者として申し上げられることはただ一つです。
それぞれに与えられた生命、無駄になさらず、どうか……
どうか、一日でも長く、大切になさってください」

 

新選組屯所・近藤の居室

(近藤・土方・井上の三人座す。

(土方・井上、近藤の話に耳を傾けている)

 

土方「(腕を組み)……そうか

井上「……総司が聞いたら、なんてぇかねぇ。
 何て云ってやりゃいいんだろうか……」

近藤「さん、どうしよう

土方「どうもこうもない、そのまま話すまでのことだ。そうだろ近藤さん」

近藤「だがそれでは……」

土方「その医者の云うとおりだ。
 俺達が士道を貫く限り、相容れることはあるまい」

井上「いや、しかし……それじゃ総司が可哀想だよ
 な、ならば今度はわしがその先生に……」

土方「源さん、誰が行っても同じだよ」

井上「……っ!(うつむく)」

近藤「そうだな、隠しても仕方あるまい……
 (部屋の外へ)おい、誰かいるか!

 

(障子が開き、隊士、顔を出す)

 

隊士「お呼びですか、局長」

近藤「総司を呼んできてくれ」

隊士「はっ(障子を閉める)」

 

(間もなく、沖田、障子を開き入室)

 

沖田「どうしましたか、近藤先
 ……おや、みんな揃ってたんですか」

土方「まぁ座れ、総司」

沖田「はぁ……(訝しげに着座)」

近藤「総司、実は今日、半井玄節の所に行って来た」

沖田「えっ(狼狽)」

近藤「玄節殿はな、
 娘御は医者に嫁がせたい、こう云っておられた」

沖田「……」

 

(間)

 

近藤「まぁあきらめろ。
女というのは掃いて捨てるほどいるんだ。
そのうち俺がお前にふさわしい花嫁を世話してやろう」

沖田「……」

土方「……(近藤を窺う)」

沖田「やだなあ近藤さんは。勘違いしてますよ」

土方「勘違い?」

沖田「土方さんだってそうですよ、
みんな勝手な想像ばかりするんだから。
私はだから……あの人をお嫁さんにしようとか、
そんなふうに考えたことなんて全然ありませんよ」

近藤「そうなのか……総司」

沖田「そうですよ。それなのに
いきなり変な話を持ち込まれて、あの先生も、
さぞ迷惑だったことでしょうね」

井上「そうか……すると、
 これはわしらの勘違いだったのか?」

沖田「おじいちゃんまで困りますよ、本当に……では、私はこれで」

近藤「おい、どこへ行く」

沖田「斎藤さんと将棋をする約束なんです。それじゃ」

 

(沖田立ち、障子に手を掛ける)

 

土方「総司」

沖田「……(止まる)」

土方「総司、お前……あの医者で何を診ていた」

沖田「……ただの風邪ですよ。
ちょっとこじらせただけです」

近藤「風邪だと? しかし半井殿は……」

沖田「あの先生は大袈裟なんですよ。
もうすっかりよくなってるのに」

近藤「そうか……」

土方「どうして俺達に隠した」

沖田「それは……
云えば二人だって、心配して大騒ぎするじゃないですか。
姉さんに頼まれてるんでしょ?」

土方「そうだ。お前に何かあったら、お前の姉さんに顔向けができないからな」

沖田「でも、もしさんにれたらもっと騒ぎになりますよ。
 あんたたちもみがいがないとか、
 総司を江戸へ連れ戻せとか云われますよ。
 それでいいんですか?」

土方「……」

近藤「……とにかくだ総司、
 風邪でも何でも
 無理をしないで養生するんだぞ。いいな」

沖田「わかってますよ……では、失礼します」

 

(沖田、部屋を出る)

 

近藤「……勘違い、か」

井上「本当にそうなんじゃろうか……」

土方「あいつがそう云ってるんだ(眼を閉じる)」

近藤「っぱりあいつは子供なんだよ。
そういうことだな、歳さん、源さん(笑う)」

 

同・廊下

(部屋を出た沖田。

(障子を後ろ手に閉め、そのまま早足に、駆けるように歩く)

 

同・玄関

(総司、たどり着き、そこで我に返ったように立ち止まる)

 

沖田「(呟く)……違うんですよ、
そうじゃないんですよ。
私はただ……

 

(沖田、足下に目をやる。

(片隅に立てかけられている傘に目を留める)

 

玄節邸・門前

(沖田、傘を手に立ち、すこし逡巡するが、やがて中に入る。

(尾行してきたのか、
 その様子を物陰から窺っている御用盗浪士三人)

 

浪士C「間違いない、沖田総司一人だ」

浪士D「どうする、屋敷に押し入るか」

浪士E「中の様子がわからん、不利だ……
仲間を集めろ、出たところを待ち伏せる」

 

同・診療室

(沖田と玄節、向かい合って座っている)

 

玄節「もう来んものと思ってたよ」

沖田「を借りてましたので」

玄節「あんたも義理堅いな……ついでに診てあげよう。口を開けて」

 

(玄節、沖田を診察する)

 

玄節「胸を開いて」

沖田「……」

玄節「あんた、私の云ったことを守ってなかったんだな」

沖田「……すみません

玄節「(微笑)困った患者だ。薬を調合してあげよう」

 

(玄節、沖田に背を向け、薬研で薬造りをはじめる)

 

玄節「(背を向けたまま)一度しか訊かんよ」

沖田「……?」

玄節「あんた……

新選組をめるつもりは、いのかね

沖田「……ありません」

玄節「そうか

 

(玄節、黙って薬研を押す)

 

沖田「私も、ひとつだけ教えてください」

玄節「何だね」

沖田「今のままですと、私は、あとどれくらい生きられますか?」

玄節「困ることを訊くね、あんたは」

 

(玄節、薬研から手を離す。

(玄節、沖田に正対し、わずかに居住まいを正す)

 

玄節「ありていに云おう。
他の患者の症例から見て……
保って五年、というとこだな」

沖田「そうですか……(微笑し)そんなに保ってくれるんですね」

玄節「!」

 

(間。

(やがて、

(玄節、沖田に背を向けて、

(無言のままに薬の調合を続ける)

 

玄節「……本当に、困った患者だな。あんたは」

沖田「すみません」

玄節「謝ることはない。
たぶんそれが、あんたの道なんだろうな」

 

(玄節、薬を袋に詰める。

(そして、沖田に向き直る)

 

玄節「できたよ……あとは、あんた次第だ(薬を渡す)」

沖田「(受け取り)長い間お世話になりました

玄節「気休めかもしれんが……お大事にな」

 

(沖田、玄節に深く黙礼。深く。

(それからやにわに立ち上がり、せかされるように急ぎ部屋を立ち去る。

(入れ違いにお悠、出ていく沖田を窺いながら入室)

 

お悠「父上っ、沖山さまは……!」

玄節「あの男は新選組だ」

お悠「えっ?」

玄節「新選組、沖田総司。おまえとは……いや、我々とは歩むべき道が違うのだ」

お悠「……!(沖田を追って走り去る)」

玄節「お悠!」

 

同・中庭

(沖田、門へと一人歩く)

 

お悠「沖山さまぁっ!」

 

(お悠、沖田に追いつき、その前に立ちふさがる。

(沖田、お悠を一瞥すると身をかわして歩みを進める。

(沖田を追うお悠。

(自然、並んで歩くように見える二人

 

お悠「……(口にしかけ、言葉を呑み込む)」

沖田「……私はね、あなたとこうして一緒に歩くのが何より、何よりも楽しかった」

お悠「……」

沖田「私には、あなたの笑顔が、他の何よりもまぶしかったんです」

お悠「……」

沖田「それだけです。……ただ、それだけだったんです」

 

同・門前

(門を出る数歩前。

(沖田、気配を感じて足を止める。

(腰の刀に手を掛け、その鯉口を切る)

 

沖田「てはいけない

お悠「!」

沖田「あなたはこの門を出てはいけないっ」

 

(沖田、一人で門をくぐり、抜刀しながら飛び出す。

(陰で待ち伏せていた浪士を受け流し、切り倒す。

(門の外で待ちかまえていた浪士たち、沖田囲む。

(沖田、門とお悠を背にして立つ)

 

浪士C「新選組の沖田だな」

沖田「……そうだ。私は……沖田総司、








だ」

浪士D「仲間の仇だ、死ねぃっ!」

 

(沖田、浪士たちと斬り結ぶ。

(次々浪士たちを切り倒す沖田、その返り血を身に浴びる。

(沖田、斬り合いの最中に咳き込み、吐血する。

で喀血を拭い、苦悶の表情を浮かべながらも、斬り続ける沖田。

(お悠、たまらず門を飛び出そうとすると)

 

沖田「出てはいけない!」

お悠「……!(足を止める)」

沖田「(よろけながらも身構え)大丈夫、私なら大丈夫です! だから……」

浪士E「くそうっ、女だ! 娘を人質に取れいっ!

 

(浪士二人、門の内側に立ちすくんでいるお悠に目がけて走り寄る。

(門前までたどり着き、お悠に立ちはだかる浪士二人。

(沖田、浪士二人に追いすがり、その背中を斬り払い、倒す。

を返す沖田の背後、崩折れる浪士二人。

 

(……同じ場面、構図を替え、お悠の視点からくり返される。

(浪士二人が崩折れると、奥に立つ沖田の背中が現れる。

(沖田、お悠に顔を向けることなく、立っている。

 

(逃げ出す浪士たち。

(沖田、門から駆けだし、浪士たちを次々斬る。

最後の一人を斬ると沖田、刀身を拭い、鞘に収め、ゆっくりと歩き去る。

(ついに、門のお悠を振り返ることなく、歩き去る。

(門内に立ちつくすお悠。

 

お悠「……!」

 

沖田、お悠。

(互いの顔も見ぬままに、

(沖田、無言で歩き続ける。

(お悠、やがて、門柱にすがりながらゆっくりと崩れる。

 

(お悠の背後に現れた玄節、その肩を抱く。

(玄節、そのまま、黙って沖田の背に頭を下げる。

(そのさまを知るや知らずや、沖田、無言で歩き続ける)

 

玄節「……何をしておる、お悠」

お悠「?」

玄節「我々は医者だ、新選組も浪士も関係ない。怪我人の手当をするぞ」

お悠「……はい」

 

新選組屯所・玄関

(沖田、帰ってくる。

(沓脱に倒れるように駆け込み、肩で荒く息をつく。

(その様子に気がついたか、井上、姿を見せる)

 

井上「おお、総司!
 (奥に向かい)若先生、土方さんっ、総司が帰ってきました!」

 

(声に呼ばれて近藤、土方現れる)

 

近藤「総司(とその姿を見て)、その血はどうした!」

沖田「……(姿勢を正し)近藤さん、報告します。
御用盗とおぼしき一味を斬ってきました……

そうだ、役人への連絡がまだだった。
土方さん、
後始末をお願いします」

 

(土方、沖田の袖口についた喀血に目を留める。

(沖田、土方の視線に気づき、さりげなく袖を隠す)

 

土方「わかった、報告しておこう。場所はどこだ」

沖田「四条烏丸通東入ル……(言いよどむ)」

土方「四条烏丸……? それはもしかして」

沖田「……(しばらく無言、やがて意を決して)

医師・半井玄節宅門前です」

土方「!」

近藤「……総司、おまえ……」

沖田「わかってます」

土方「……」

沖田「わかってますよ……報告は以上です。じゃ」

 

(沖田、黙礼すると廊下に姿を消す。

(後に残る近藤、土方、井上。顔を見合わせる)

 

同・廊下

(歩き行く沖田、将棋盤を抱えた原田とすれ違う)

 

原田「おう総司、帰ったのか」

沖田「ただいま(会釈して通り過ぎる)」

原田「(呟く)なんだあいつ……にでも振られやがったかな……」

 

(立ち去る沖田の背にかぶせて土方のナレーション)

 

土方N「この一は、その後の時代のうねりの中に押し流され、消えていった。
だが、
は今でも思う。
あの時、この
に対処したのが私や近藤ではなく、
例えば原田左之助のような世慣れたであったならば、
あるいはもっと異なる
結末になっていたのではないだろうかと……
だが、すべてはもう
わったことだ。
沖田総司房良、そのとき二十一歳。
医師
半井玄節診立てどおり、
その四年後の慶応四年、
二十五歳でその生涯じることになる

 

清水寺境内・音羽の滝

(画面にタイトル『二年後』

(巡察途中の沖田、隊士を引き連れ通りがかる。

(その沖田の眼に茶店と、その奥の滝が目に留まる。

(沖田、立ち止まる)

 

隊士「沖田先生、どうかしましたか」

沖田「(我に返り)いや……
そういえば、今日は何日だったかな」

隊士「今日ですか、今日は十五日ですが」

沖田「そうか……そうか、
 今日は
八の日じゃなかったんだ」

隊士「はあ……」

沖田「なんでもない、行きましょう」

 

(沖田たち、歩き出す。

(しぶきをあげて落ちてゆく滝。

(タイトル『お水取り 完』

 

(fin)

 

(H19.1.13_R.YASUOKA
(Based on TV-drama
('SHINSENGUMI-KEPPUROKU'
(by RYOTARO SHIBA/SHINJI KESSOKU
(NET/TOEI-KYOTO Production.co.,LTD.)

 

おことわり:
 本作は司馬遼太郎原作・結束信二脚本テレビドラマ「新選組血風録」をモチーフとしたパロディです。
 本作に登場する、もしくは想起される一切の人物・団体・事件その他は実在のものとは無関係です。
 また、本作に登場する沖田総司の読みは、ドラマにならって
 「おきたそうし」とお読みくださるようお願いします。

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