茶房「起承転結」オリジナルストーリー
「盂蘭盆会(うらぼんえ)」〜その3〜

 

「よし、どんぴしゃ。」

 と、お父さんが言いますと、光っていた空中のところに、タイムマシンがうすく見えてきました。お父さんが、時計を見ながら、

「さん、二、一」

 とカウントダウンをすると、ゼロになった時、タイムマシンがあらわれました。しゅん一おじさんが、こう一くんとえみちゃんに、

「近づくなよ、あぶないから。」

 と声をかけてました。すると、えみちゃんが、

「ねえ、なんでタイムマシンはすけてるの。」

 と聞きますと、お父さんが、

「それはね、タイムマシンの時間のたちかたと、えみちゃんたちの時間のたちかたがちがうから、ざんぞうでうすく見えるんだよ。」

 と答えました。おじいちゃんが、お父さんに、

「しず馬、たいざい時間かくにん。」

 と言いますと、お父さんは、パピレットを見ながら、

「かしこうかけいぞく時間七分二十八びょう、のこり六分二びょう。」

 と言いました。しゅん一おじさんが、こう一くんたちに、

「あと6分だ、じっくり見るんだぞ。」

 と言ってました。

 タイムマシンは、青い光の中にうかんでいて、おばけみたいでちょっとこわかったけど、きれいでした。よく見ると、タイムマシンのひょうめんのガラスから、ご先ぞさまが見えました。おじいちゃんとおばあちゃんが、

「ご先ぞさま、おひさしぶりですー。」

 と言いながら、手をふりますと、ご先ぞさまは気がついて、ゆっくり手をふりかえしました。それから、ご先ぞさまは、なにかをいうように大きく口をうごかしました。声はきこえなかったけど、なにを言ってるのかはお父さんたちにはわかってるみたいで、お父さんは、手でばつをつくって、ご先ぞさまに見せてから、頭を下げました。すると、ご先ぞさまはかなしそうなかおをして、タイムマシンの中のほうへかおをむけました。その、タイムマシンの中には、ご先ぞさまのおくさんが、ベッドによこになっていました。ご先ぞさまのおくさんは、ベッドからおきようとしたので、ご先ぞさまが手つだって、おこしてあげてました。すると、えみちゃんが、

「ママ、あの女の人は。」

 とまさ子おばさんに聞きますと、まさ子おばさんは、

「えみちゃん、ご先ぞさまのおくさんだから、えーと、やっぱりご先ぞさまになるわけね。」

 と答えてました。すると、おじいちゃんがえみちゃんに、

「えみっこや。ご先ぞさまはね、おくさんのびょう気をなおすために、未来へむかっているんだよ。」

 とせつ明しました。でも、えみちゃんは、

「びょう気なの。パパになおしてもらえばいいのに。」

 と聞いてきたので、こう一くんが、

「げんだいのいがくで、まだ、ちりょうほうが見つかってないんだって。」

 と答えますと、しゅん一おじさんが、

パパたちもね、いっしょうけんめいちりょうのけんきゅうをしてるけどね。だから、こうして三じげんにあらわれるときに、ちりょうのけんきゅうじょうきょうをほうこくしてるんだ。」

 と言いますと、おじいちゃんが、

「そう。むかしからだ、おじいちゃんがうまれるずうっとまえからな。」

 と言いました。えみちゃんも、なっとくして、

「そうか。じゃ、びょうきがなおせるまで、ふたりっきりでずっとみらいにいくの。」

 と聞きますと、お父さんが、

「そうだよ。たった、二人だけでね。」

 と答えました。すると、えみちゃんは、

「二人ぼっち、さみしくないのかなー。」

 と言いました。

 だれかが、なにかいうのかな、と思ってましたが、でも、だれも、いいませんでした。少したってから、おじいちゃんが、

「おれだって、そうだ。ばーさまがおなじびょう気にかかったら、二人ぼっちで未来に一しょに行ってやるけんのー。」

 と言ってから、おばあちゃんのかたに手をおきました。すると、おばあちゃんは、

やめてよあんた。こんなとこで、なに言ってんのよ。」

 と、てれてました。すると、まさ子おばさんが、

「あら、いいじゃないですか。ね。パパ。」

 と言うと、しゅん一おじさんも、

「そうですよ。すてきですよ。お父さん、お母さん。」

 と言いました。

 それから、みんなで、ご先ぞさまに手をふったり、かおを見せあったりしました。こう一くんが、

「話はできないの。」

 としつもんすると、お父さんが、

「時間のたちかたがちがうから、声のつたわりかたもちがうんだよ。」

 と言いました。すると、しゅん一おじさんが、

そうだ、ふみえ先ぱいがクレーディーをもってるみたいだから、それかりてメッセージをつたえられませんかね。」

 と思いつきました。それで、みんなでベンチのふみえお姉さんをみると、まだねてました。でも、お父さんが、

「いいよ。もう時間もないし。」

 と言ったのですが、だけど、このままねたまま、ご先ぞさまにあわないのもかわいそうなきがしたので、こっそりふみえお姉さんのところへ行って、手をゆすって、

「ふみえお姉さん、ご先ぞさま来てるよ。」

 とおこしてあげました。すると、お姉さんは目をさまして、それから、

「あら、おはよー。」

 と言いながら、ぼーっとして、まわりをみ回してましたが、タイムマシンが光ってるのに気がつくと、いきなりたちあがって、

「うわ、やべー。」

 と大声で言うと、それからタイムマシンにむかって走りました。走りながら、ポケットから、さっきのコントローラーを出して、スイッチを入れました。すると、タイムマシンのまわりの、さっきおいたきかいが光って、タイムマシンがき色にてらされました。すると、ふみえお姉さんは、

「よっしゃー。出力八十パーセント、いけー。」

 と大きな声でさけびました。みんなはびっくりして、おばあちゃんが、

「な、なに。なんなの。じーさん、あれ。」

 と聞きますと、お父さんがふみえお姉さんを見て、

「おい、なんだあの光は−。」

 と言いました。すると、ふみえお姉さんは、

「あ、あれ。セリヌンティアじかいにフィルターつけて、かし光せんにしたのよ。どう、きれいでしょ。」

 とせつ明しました。お父さんは、

「そんなこと聞いてねー。なにをしてんだなにを。え、おまえ、セリヌンティアじかいて、まさか。」

 というと、き色く光ってうかんでるタイムマシンを見上げました。ふみえお姉さんは、

「ピンポーン。」

 と言いました。すると、おじいちゃんが、

「き、きさま、まさかここで、あれを、時間そこうを。」

 と言いますと、そのすぐあとにつづけて、お父さんが、

「ばか。おまえ、ご先ぞさまを実けん台にしたのかー。」

 とつづけて言いますと、ふみえお姉さんは、

「だってさー、一しゅう間とか、一か月まえくらいからリープしたんじゃ、いそうへんいかけてもそこうが見こめないのよねー。今のぎじゅつじゃ、十年たんいでしけんたいをリープさせなきゃ、実けんのしようがないってあきらめかけてたら、そしたらちょうど、いいぐあいにかこからさ、まるであたしに実けんしてくださーいて言わんばかりにリープしてきたんだもん。これ、ことわっちゃわるいわよねー。」

 としゃべりました。けれど、とちゅうでお父さんはみみをふさいで、

「言うなー。それい上、おまえのたわ言など聞きたくなーい。」

 としゃがみこみこんでしまいました。でも、おじいちゃんが、

「しず馬、はやくこのばかをなんとかせい、ご先ぞさまをまもるんだ。」

 と言って、お父さんを立たせました。すると、ふみえお姉さんは手をふって、

大じょぶよー。りろんじっしょうのためのしさくきだから、そんなせいのうでることもないし。ちょっとそこうさせるだけだからさー。」

 と言いましたが、お父さんは、ふみえお姉さんのかたをつかんで、

「止めろ。とにかく止めろ、いいから止めろ。どこだせいぎょきは。」

 と言いながら、ふみえお姉さんの白いのポケットに手をつっこみました。

「きゃあ、いや、ちかーん。だめよ、いけないわお兄ちゃん、ついにきんだんの一せんをこえるのねー。」

 とふみえお姉さんが言いますと、お父さんはすごくおこって、ふみえお姉さんの頭に、げんこをおとして、

「ふざけんな、ばか、このち女。」

 と言いました。ふみえお姉さんは、

「いったーい。お兄ちゃんがぶったー。」

 としゃがんで、頭をなでながら、

「大じょぶなのにー。出力だってさ、ちゃんとおさえてんだからー。ほら。インジケーターを見てごらんよー。」

 と言うと、さっきのコントローラーをだして、みんなに見せようとしました。

 お父さんはそれをうばいとって、ボタンをおしてそう作してました。いっぱいボタンをおしたり、ひっぱったり、

「えーい、ちきしょー。止まれ、止まれー。」

 とさけんでコントローラーをたたきつけたりしてましたが、だけど、タイムマシンのよう子は、ぜんぜんかわりませんでした。すると、ふみえお姉さんはガッツポーズをとって、

へへーん。一どスタートさせたら自どうせいぎょ、どうしたって止まらんのよー。」

 と言いました。お父さんは、コントローラーをふみえお姉さんになげて、

「くそー。本体はどこだ、はっ生きはどこだ。」

 とあたりを見回しました。そうしたら、しゅん一おじさんが、

「ジェネレータです。きっと、あのコードが電げんなんです。」

 と言って、ジェネレータのほうへ走りました。ふみえお姉さんは、

「あ、こら、うらぎりものー。

 とおいかけようとしたのですが、その時、タイムマシンがき色い火花が光って、しゅん一おじさんのこしにめい中したかと思うと、しゅん一おじさんのこしから、オレンジいろのきれいな火花が出ました。すると、しゅん一おじさんは、

「あひゃー。」

 とさけんで、ころびそうになりながら、ふらふらよろけました。そのまま、しゅん一おじさんがタイムマシンのほうに歩いてったので、それを見ていたふみえお姉さんが、

「あ、こら、あんまりちかづいちゃだめだって。」

 と言いましたが、そのとき、もう一ど火花がとんで、今どはしゅん一おじさんの体ぜん体が光ったかとおもうと、しゅん一おじさんのすがたがきえてしまいました。まさ子おばさんが、

「パパー。パパー。」

 と言って、しゅん一おじさんのいたとこまで走って行こうとしましたが、ちかづくまえに、まさ子おばさんのうでどけいから火花がちったので、まさ子おばさんは、

「きゃー。」

 と言って、にげたので、お父さんがかけよって、まさ子おばさんをたすけてつれもどしました。お父さんは、ふみえお姉さんに、

「ふみえ、ふみえ、な、なんなん、なんだこれはー。」

 と聞きますと、ふみえお姉さんは、

「へんね、なんか、よじょうエネルギーがオーバーフローおこして、コンプトンこうかをひきおこしてるみたいだけど。あ。もしかして、セリヌンティアじかいのえいきょうでじげんてきにふあんていかして、時間てんいをひきおこしたのかもしれないわね。」

 と答えました。お父さんは、

「おまえ、しゅん一くんをタイムリープさせたのかー。」

 と聞きますと、ふみえお姉さんは、

「しらないわよ。あんなになるなんて、思いもよらなかったしー。」

 とわらいました。そうしたら、まさ子おばさんがいきなりふみえお姉さんのえりくびをつかんで、

「タイムリープですって。おねーちゃん、パパを、あの人をどこへとばしたのよー。」

 と言いながらゆすぶりました。すると、ふみえお姉さんは、

「だ、大じょうぶよ。すぐもどって来るからさ。たぶん。ね、おにいちゃん。」

 と言ってから、お父さんをみました。まさ子おばさんがお父さんに、

「お兄ちゃん、かえって来るの。あの人、かえって来るの。」

 とたずねますと、お父さんは、

「あ、ああ。もし、き道がひょうじゅんけいじょうをしてれば、だけどね。まあ、がいさんで三百日はこえないと思うけど。」

 と言いました。そのとなりで、ふみえお姉さんが、

「ほら、よかったねーまさ子。一年くらいでもどって来るってさ。しんぱいしないの。」

 と言いながら、まさ子おばさんのかたをたたきました。でも、まさ子おばさんは、ふみえお姉さんのほっぺに一ぱつびんたをくらわせると、

「わー。パパー。」

 と大きな声でさけびながらへたりこんで、なき出しました。こう一くんとえみちゃんが心ぱいしてちかよりますと、まさ子おばさんは二人をだきしめてなきました。おばあちゃんが、

「とにかく、今はあのタイムマシン、あれを早くなんとかしなさい。しず馬。」

 といいました。

 タイムマシン光が赤くなってきて、まわりにおいてたお父さんのパピレットとか、おじいちゃんのカメラとか、いろんなきかいから火花がとんでました。ちゅう車場の車から、大きな火花がたてに上がったのを見たとき、なんか、まほうみたいだな、と思ってたら、いつの間にかとなりにこう一くんが来ていて、車にむかって、

「メギドーン。」

 と言いました。すると、本とにこう一くんがメギドーンをつかったみたいに見えました。さきに言われたのがちょっとくやしかったのです。でも、すぐに、こんどはお父さんの車から火花が出たので、

「メギドーン。」

 とさきに言うことができました。そうしたら、こう一くんときょうそうになって、がいとうとか、電光けいじばんとか、色んなものから火花が出てばくはつするたびに、大きな声で、

「メギドーン。」

 と言ってたら、お母さんがえりくびをひっぱって、

「ばかやってないで、早くこっちへにげなさい。」

 と言われてしまいました。その時、タイムマシンがひときわ大きく光って、火ばしらをあげて上にとびました。だから、こう一くんとほとんど同時に、

「メギドーン。」

 と言いました。すると、タイムマシンは空へのぼったまま、きえてしまいました。今までの火花もなくなって、まわりがしずかになりました。まわりを見ると、ジェネレータのところで、お父さんがさっきのきかいのコードを引きぬいて、かたでいきをしながら、

「や、やった、やったぞ、やった。」

 と言って、そのままねころがりました。おじいちゃんとおばあちゃんは、空を見上げたまま、

「どうなったんかの−。ご先ぞさま。」

 と言ってました。すると、お父さんがおき上がって、

「とにかく、ざんエネルギーをかいせきしてし算しないと。え、あ、おかしい。」

 と言いながら、パピレットをさわりましたが、さっきの火花のせいで、パピレットはおちてしまっていました。お父さんは、

わー。わー。うそだ、うそだと言ってくれ。おれの、おれのデータがー。ろん文がー。かいせきプログラムがー。」

 とさけびながら、じべたにうずくまって、それからじめんに頭をうちつけたりしてましたが、お母さんにささえられて立ち上がると、なみだをふいて、あきらめて、メモとボールペンで計算をはじめました。

 

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